TBS金曜10時枠の「おひとりさま」は,阿部寛と大橋のぞみというコンビで親子の絆を描いたこの春の佳作「白い春」の脚本家,尾崎将也の新作だ。しかし局は違えど題名でほぼ予想が付くように,尾崎作品としては,同じ阿部寛の主演により男版の「おひとりさま」を乾いたユーモアで描いた「結婚できない男」の続編と言っても差し支えないドラマになっている。
本作と「結婚できない男」との顕著な違いは,徐々に恋に落ちていく主人公のカップルが,前作では職種こそ違え,共に職業人としてスキルを積んだ「プロフェッショナル」同士で年齢も近かったのに対して,本作では二人は同じ職業(教師)で主人公の観月ありさがヴェテラン(学年主任),お相手の小池徹平が新任で一回り近く年下という設定になっている点だろう。
番組の宣伝文句にもなっている「肉食女子」と「草食男子」の格差恋愛という主題は,確かに今の日本社会のトレンドをヴィヴィッドに描くには格好の設定かもしれない。
しかしこの設定がうまく機能していないせいなのか,今のところ,敢然と一人で生きようとしている(筈の)主人公のキャラクターが,ちゃんと立っていない。「結婚しない男」が,仕事において妥協しないポリシーを持ち,食に拘り,カラヤンかフルトヴェングラーにでもなったつもりでオペラを振ったりする阿部寛のキャラクターを,「それがなんぼのもんじゃい」と突き放して描くことで,リアルな「おひとりさま」像を作り上げていたのに比べると,観月ありさ扮する教師の生活は成り行きでこうなった的な,ドタバタ劇の域を脱していない。
真矢みき扮する校長先生と行く猫カフェや陶器作りの描写だけで「おひとりさま」の楽しさと孤独を表現するのは安易に過ぎるし,かといって生徒とガチで張り合う松下奈緒に,観月とは違う形の「おひとりさま」を演じさせてもドラマに奥行きがもたらされることはないことは明らかだ。
ただ身長がかなり違う観月と小池を,特に靴や撮影アングルの工夫をせずに,普通に並べて歩かせるショットは,なかなか新鮮だ。山田太一の「君を見上げて」のドラマ化と思えば,新たな見方が出来るかもしれない。
一方で心配なのは,好調だった第1回から回を重ねる毎に,笑いのフットワークとヴァラエティ,そして小栗旬のバスター・キートン的な真面目顔が放つ輝きが失われつつある「東京DOGS」だ。
第3回はもう笑える箇所はなくなり,水嶋ヒロが怒鳴るだけの空疎でちゃちな犯罪劇が,延々だらだらと続くだけだった。アクションはあくまで添え物で,主役2人のキャラクターで物語を引っ張る,という意気込みを感じさせた初回の勢いは,何処へ行ってしまったのか。
水嶋ヒロのツッコミに小栗旬のボケ。今が旬のイケメンが目当ての女子高校生達だって,この新鮮なコンビが醸し出す新しい笑いをこそ求めているはず。もしもアクションと謎解きこそがドラマの核と言うのならば,その部分は初回も水準には達していなかった訳で,方向転換は必須だ。
本作と「結婚できない男」との顕著な違いは,徐々に恋に落ちていく主人公のカップルが,前作では職種こそ違え,共に職業人としてスキルを積んだ「プロフェッショナル」同士で年齢も近かったのに対して,本作では二人は同じ職業(教師)で主人公の観月ありさがヴェテラン(学年主任),お相手の小池徹平が新任で一回り近く年下という設定になっている点だろう。
番組の宣伝文句にもなっている「肉食女子」と「草食男子」の格差恋愛という主題は,確かに今の日本社会のトレンドをヴィヴィッドに描くには格好の設定かもしれない。
しかしこの設定がうまく機能していないせいなのか,今のところ,敢然と一人で生きようとしている(筈の)主人公のキャラクターが,ちゃんと立っていない。「結婚しない男」が,仕事において妥協しないポリシーを持ち,食に拘り,カラヤンかフルトヴェングラーにでもなったつもりでオペラを振ったりする阿部寛のキャラクターを,「それがなんぼのもんじゃい」と突き放して描くことで,リアルな「おひとりさま」像を作り上げていたのに比べると,観月ありさ扮する教師の生活は成り行きでこうなった的な,ドタバタ劇の域を脱していない。
真矢みき扮する校長先生と行く猫カフェや陶器作りの描写だけで「おひとりさま」の楽しさと孤独を表現するのは安易に過ぎるし,かといって生徒とガチで張り合う松下奈緒に,観月とは違う形の「おひとりさま」を演じさせてもドラマに奥行きがもたらされることはないことは明らかだ。
ただ身長がかなり違う観月と小池を,特に靴や撮影アングルの工夫をせずに,普通に並べて歩かせるショットは,なかなか新鮮だ。山田太一の「君を見上げて」のドラマ化と思えば,新たな見方が出来るかもしれない。
一方で心配なのは,好調だった第1回から回を重ねる毎に,笑いのフットワークとヴァラエティ,そして小栗旬のバスター・キートン的な真面目顔が放つ輝きが失われつつある「東京DOGS」だ。
第3回はもう笑える箇所はなくなり,水嶋ヒロが怒鳴るだけの空疎でちゃちな犯罪劇が,延々だらだらと続くだけだった。アクションはあくまで添え物で,主役2人のキャラクターで物語を引っ張る,という意気込みを感じさせた初回の勢いは,何処へ行ってしまったのか。
水嶋ヒロのツッコミに小栗旬のボケ。今が旬のイケメンが目当ての女子高校生達だって,この新鮮なコンビが醸し出す新しい笑いをこそ求めているはず。もしもアクションと謎解きこそがドラマの核と言うのならば,その部分は初回も水準には達していなかった訳で,方向転換は必須だ。