充実作が多かった今期のドラマだが,どれか1作となると,私は曲者脚本家ユニット「木皿泉」入魂の青春ドラマ「Q10」を挙げたい。
開始直後には「キュートを狂言廻しに使った青春群像ドラマ」と紹介したのだが,回が進んで物語が佳境に入るに従って,平太(佐藤健)とキュート(前田敦子)の運命的な恋を全面に押し出すことで,逆に背景の人間模様が鮮やかになっていく様子は,技巧を超えた上手さを感じさせて見事だった。
途中で薄まったSF色が,大団円に向けて色濃くなっていく中で,世代や性別を超越した「人間同士の信頼」という大きなテーマを,気恥ずかしさを乗り越え,甘酸っぱくもリアルに浮き彫りにしたのは,脚本と演出,そして出演者のエネルギーの賜物だったと言える。
中尾(細田よしひこ)のオーバーアクション,校長先生(小野武彦)と藤丘(柄本時生)の絆,山本(蓮佛美沙子)の純情。最終回は,全てが涙を誘う名シーンの連続だった。「あっちゃんとたける」という旬の若手スターを起用したにも拘わらず,平均視聴率がギリギリ11%というのは,制作関係者にとっては期待はずれだったかもしれないが,ドラマのクオリティという面では大収穫だったと思う。
ただ1回を除いて,視聴率が15%を割ることなく推移し,最終回は溜めていた跳躍力を一気に放出したかのように「19.2%」という今期の最長不倒を叩き出したのが,「フリーター,家を買う。」だった。人気という点では現在最高の小説家有川浩と二宮和也のコラボレーションということで,開始当初から話題をさらっていたが,ここまでの支持(平均17.14%,文句なしの今期NO.1)が得られるとは予想外だった。
先が読めてしまう展開と,常に紗がかかったような画面のせいもあって,世評ほどは乗れなかったのだが,心療内科の先生(田中壮太郎)やハローワークの担当者(アンジャッシュ児嶋),誠治の父(竹中直人)が面倒を見ていた学生(玄里),更には霊感商法のセールスマンなど,脇のキャスティングがどれもこれもズバリとはまって,ドラマの幅を拡げていた点は買えた。竹中直人が,実に久しぶりに良い仕事をしていたのも驚きだった。普通にやれば,まだやれるじゃん,という感じだ。
今どきあんな仕事を人力でやるかよ,と突っ込みたくなる工事現場の描写や,高速道路の下請け業者がパソコンを導入していないという設定など,リアリティという点で,問題がない訳ではなかったが,香里奈の口から「エクストラドーズド橋」という言葉が出てきた時は,正直萌えてしまった。時代は「土木萌え」だ!
演技という点では,上戸彩も「流れ星」で,大きなものを手にしたかもしれない。難病と臓器売買,恋愛と家族愛という,扱い方によっては沈積してしまいがちな複数のテーマを,バランス良く整理した脚本も巧みだったが,上戸彩と竹野内豊の抑制のきいた演技がなければ,通俗的でのっぺりとしたドラマになっていた可能性が高い。
元風俗嬢でありながらも,純情を失わず,温もりを求め続ける孤独な女の子,という役柄になりきった上戸は,歩き方,台詞の間,箸の持ち方,視線,全てに揺るぎない集中力を投入して,視聴者を魅了した。その点では,彼女の兄を演じた稲垣吾郎のなりきり振りと共振していたと言えるかもしれない。
北乃きいが生彩を欠いていたのは,役柄のせいだけではなかったようなのが少し気に掛かったし,総じて地味ではあったのだが,中身の詰まった「月9」だったと思う。
次回の戸田恵梨香と武井咲(えみ)の対決にも期待したい。
開始直後には「キュートを狂言廻しに使った青春群像ドラマ」と紹介したのだが,回が進んで物語が佳境に入るに従って,平太(佐藤健)とキュート(前田敦子)の運命的な恋を全面に押し出すことで,逆に背景の人間模様が鮮やかになっていく様子は,技巧を超えた上手さを感じさせて見事だった。
途中で薄まったSF色が,大団円に向けて色濃くなっていく中で,世代や性別を超越した「人間同士の信頼」という大きなテーマを,気恥ずかしさを乗り越え,甘酸っぱくもリアルに浮き彫りにしたのは,脚本と演出,そして出演者のエネルギーの賜物だったと言える。
中尾(細田よしひこ)のオーバーアクション,校長先生(小野武彦)と藤丘(柄本時生)の絆,山本(蓮佛美沙子)の純情。最終回は,全てが涙を誘う名シーンの連続だった。「あっちゃんとたける」という旬の若手スターを起用したにも拘わらず,平均視聴率がギリギリ11%というのは,制作関係者にとっては期待はずれだったかもしれないが,ドラマのクオリティという面では大収穫だったと思う。
ただ1回を除いて,視聴率が15%を割ることなく推移し,最終回は溜めていた跳躍力を一気に放出したかのように「19.2%」という今期の最長不倒を叩き出したのが,「フリーター,家を買う。」だった。人気という点では現在最高の小説家有川浩と二宮和也のコラボレーションということで,開始当初から話題をさらっていたが,ここまでの支持(平均17.14%,文句なしの今期NO.1)が得られるとは予想外だった。
先が読めてしまう展開と,常に紗がかかったような画面のせいもあって,世評ほどは乗れなかったのだが,心療内科の先生(田中壮太郎)やハローワークの担当者(アンジャッシュ児嶋),誠治の父(竹中直人)が面倒を見ていた学生(玄里),更には霊感商法のセールスマンなど,脇のキャスティングがどれもこれもズバリとはまって,ドラマの幅を拡げていた点は買えた。竹中直人が,実に久しぶりに良い仕事をしていたのも驚きだった。普通にやれば,まだやれるじゃん,という感じだ。
今どきあんな仕事を人力でやるかよ,と突っ込みたくなる工事現場の描写や,高速道路の下請け業者がパソコンを導入していないという設定など,リアリティという点で,問題がない訳ではなかったが,香里奈の口から「エクストラドーズド橋」という言葉が出てきた時は,正直萌えてしまった。時代は「土木萌え」だ!
演技という点では,上戸彩も「流れ星」で,大きなものを手にしたかもしれない。難病と臓器売買,恋愛と家族愛という,扱い方によっては沈積してしまいがちな複数のテーマを,バランス良く整理した脚本も巧みだったが,上戸彩と竹野内豊の抑制のきいた演技がなければ,通俗的でのっぺりとしたドラマになっていた可能性が高い。
元風俗嬢でありながらも,純情を失わず,温もりを求め続ける孤独な女の子,という役柄になりきった上戸は,歩き方,台詞の間,箸の持ち方,視線,全てに揺るぎない集中力を投入して,視聴者を魅了した。その点では,彼女の兄を演じた稲垣吾郎のなりきり振りと共振していたと言えるかもしれない。
北乃きいが生彩を欠いていたのは,役柄のせいだけではなかったようなのが少し気に掛かったし,総じて地味ではあったのだが,中身の詰まった「月9」だったと思う。
次回の戸田恵梨香と武井咲(えみ)の対決にも期待したい。