いやぁ、やられた。
散々、駅の東側が危ないと聞かされていた。
ホテルはデュッセルドルフ中央駅の西側だから注意をあまり払っていなかったのも事実だ。
電車を降りて、駅の下の通路でデュッセルドルフ在住の高校の先輩に電話をかけて
アドヴァイスを受けて駅の外に出る。
完璧だ。
左の肩に小さいバッグをかけて、トラベルバッグを引っ張って・・・
ホテルは目の前。
交差点の中をトラムが走っている。
その線路を越えた辺りで、
「ヘィ、ユー。,:@[]\/:@@@;@[]]」と酔っ払い親父のような奴に声をかけられた。
振り返ってバッグを見ると、鳥の糞が大量にかかっていた。
まったく、これから出かけるのに・・・
チェックインの手続きの時に、荷物を少し離して置いた。
受付のお兄さんに、デュッセルドルフの警察のお達しで荷物は近くに置いてということを聞いたが臭うと思ってそのままにした。
部屋で汚れのチェックをした。
肩掛けカバン、トラベルバッグ、着ていたシャツ、ズボンにドロドロにかかっていた。
部屋の水道で洗う。
全然落ちない。
臭いをかぐ。
全然臭くない。
しばらくして、ペイントだということに気付いた。
この旅行のために買った、肩掛けバッグ。いくら洗っても落ちない汚れ。
誰かにかけられたのだ。
駅からホテルまでの道のり、かけられたことには気づかなかった。
ホテルのすぐ前で声をかけられた。
ホテル「モテル・ワン」の真ん前、矢印の先辺りで声をかけられたゆきたんくである。
トラムの線路があるので立ち止まるには良い場所ではなかった。
線路を越えて信号の手前で汚れを確認。
すぐふかなければ思い、宿泊するホテルが目の前だったので入った。
それがかえって良かったのだろう。
ホテルで汚れを確認し、洗ったことでペイントだと分かった時点で、一緒に出掛ける予定だった先輩に電話をかけた。
「何か盗まれてない?」
第一声で、スリ軍団に狙われた疑いを持った。
約束に遅れることを詫びて、洗い物の続き。
落ちない汚れだということを理解して、乾く前にビニール袋に入れてカバンにしまった。
ホテルがもう少し遠かったら別の展開(悪い)があったかもしれない。
今日は土曜日なので車を停める場所が見つからないだろうとわざわざ電車がかけつけてくれた先輩である。
かねてからアルトシュタット(旧市街)とそれにまつわるシューマンについて検証することとなった。
そして宿泊するホテルは初日と同じホテル。
その夜にも先輩と歩いた場所がある。
次の写真の場所だが、その時は人がいなくてガラガラだった。
「休日になると人が通れなくなるくらい賑わっているよ。」
「みんなここでビールを飲みながら過ごしているんだ。」
と聞いていて、今日は休日。
いやぁ、店の中ではなくて外で飲む。お話の通りの光景。 → Map
この人込みを通り抜けてライン川へ。 下戸のゆきたんくで、先輩に申し訳ない・・・
さて、シューマンの自宅からライン川に飛び込んだ場所を推理する。
シプスブリュッケという名前を突き止めていたのだが、先輩曰く。
「船橋だね」と。
そう、船を渡した橋のことである。
シプスはシップス、ブリュッケはブリッジと英訳すればシップス・ブリッジで船橋となる。
実際、当時ライン川に架かっていたのは、船橋だったそうだ。
先輩に対岸を見るように言われた。
対岸には通路が切れたような部分があった。 → Map
ライン川の水位は一定でなく、水量が多い時には溢れるくらいになるという。
その時にも川に架かっている橋に近づくのなら、この延長上に橋があったんではという推理だ。
そしてもう一つ。当時のエッチングである。
ゆきたんくが小学校3年生の時に見ていた原色図解百科の第9巻「音楽と鑑賞」でトロイメライのライナーノートの中にあったエッチングである。
この場所についての検証である。右に深く折れ曲がっている場所に入り江があって船が出入りしていたようだ。
エッチングにあった、教会はランベルタス教会で現存している。
ただ、大戦時、この辺りは徹底的に破壊されたということだ。
ケルンにある大聖堂は周囲が破壊されても、キリストということで破壊されなかったことから、教会だから当時の建物だろうと考えていた。
先輩は、「いや、再建のようだね。ドレスデンの有名な教会も破壊されたままのことがあった。教会だからと言って破壊を免れないものもあったようだ。」と仰った。
当時の場所に教会が建っているのだろうか。
現在のランベルタス教会
休日のせいか、人で溢れているライン川沿いである。
夜も8時30分をを過ぎだんだんと暗くなってきた。
人通りも落ち着いてきたようだ。
エッチングのように見えるポイントを探す。
なかなかポイントは見つからない。先輩の一言で場所を移動する。
エッチングには樹木があった。
この近くで樹木があるところに行って見よう。
その提案で樹木のある所まで移動した。 → Map
ライン川沿いで樹木が認められるのは、ラインクニ―橋のたもとだ。
橋脚が邪魔で見えない。
見える位置に移動する。
「おぉっ」
小さいが、エッチングの構図とほぼ同じだ。
少し近づけてみる。
そして、シプスブリュッケがあっただろう場所に歩いて行く。
対岸の通路がある部分に対峙する。
ゆきたんく「この辺りでしょうね。」
先輩 「まず、そうだね。」
当時のことを見ていた人の話に触れたことがないので、妥協する以外にはない。
そして、シューマンハウスからこの辺りまでの道筋は。
当たり前に考えて、精神を病んでいた人が川に飛び込もうとしている時、そして46歳(当時)という年齢を考えた時にそうそう長い距離を走れるものではない。
そして、川沿いを歩いていて発作的に飛び込んだのではなく、家を飛び出してライン川に飛び込んだということから考えてみる。
ゆきたんく 「自分だったら最短距離で行きますね。」
先輩 「わざわざ遠回りはしないだろうね。」
5月の投稿で使った画像である。
実際にはこうではなかったかという検証(青矢印)
シューマンハウスから北に140mのところにカールプラッツという市場がある。
この交差点でまっすぐ進んだか、左折したかということで議論になった。
シプスブリュッケを基本に考えると直進が考えられる。
しかし、精神状態からすると近道を選ぶだろう。
そしてライン川の流れは非常に速いことが分かった。
青矢印の最後の部分で飛び込んで流されたことも考えられる。
実際には飛び込んだ瞬間を見た人はいないようだ。
少し流されてから助けられたということだ。
その場所がシプスブリュッケであってもおかしくはない。
先ほど書いたようにラインの流れは速い。
実際に見てその速さに驚いた。
助けようとした人が飛び込んだとしても、助けられたか。
敢えて物語りを作るとすれば、青矢印の最後の所で飛び込みシプスブリュッケの辺りで助け上げられたというのが考えられる。
カールプラッツを左折するとここ(シュール通り)に出る。 → Map
この写真を撮った立ち位置のすぐ後ろはライン川だ。
振り返るとライン川
もうこれ以上の検証のしようはない。
様々な角度からエッチングの検証をした。
そしてエッチングの絵の場所に来れたことは間違いないようだ。
小学校3年生から40年以上の時を経て、その場所に立てたことに感激した。
一瞬頭の中に「トロイメライ」が流れた。
「食事にしようか?」
先輩に促されて移動する。
電車に乗ってインマーマン通りの方に戻る。
インマーマン通り。ラーメン匠のチャーシューメン。
最後はホテルの近くでラーメンをご馳走になり、ホテルまで送っていただいた。
東京都立秋川高等学校の先輩は面倒見の良い方が多い。
しかし、この1週間で初めてお会いしたのに、散々お世話になりっぱなしで恐縮である。
また、明日はデュッセルドルフ空港まで送って下さるという。
感謝してやまない。
先輩、この場をお借りしてあらためて御礼申し上げます。
口上も大声でしたいと思います。