最終章 旅先でめぐり逢えた人びと
私は思い込みの激しく、独断と偏見の多い64歳の身であり、
その上おしゃべりな男性であるので、今回の旅先でいろいろな方と談話をしたした。
『長崎歴史文化博物館』でポランティアで解説して下さった70歳前後の男性と、
館内の展示品の前に歴史のことを談話したり、
館を辞しする寸前にお互いに自己紹介を兼ねて、これまでの人生の軌跡を談笑したりしたのである。
『グラバー園』で霧雨降る中、庭園の隅にある喫煙場に於いて、
ボランティアでガイドをなさっている65歳前後の男性と、
お互いに煙草を喫いながら、下方に観える長崎港の情景を観たりし、
遙か江戸時代の異国船の情景を談話したりした・・。
そして、『雲仙温泉』の観光ホテル内で、
宿泊したフロアーの休息室のソファーで私は本を読んでいる時、
やはり滞在している新潟県の三条市の75歳前後の男性と談笑したのである。
奥様と知人のご夫妻と4人で、雲仙温泉に滞在している、と述べられたり、
私と同様に宿泊した部屋の室内で禁煙とし、
こうして休息室にある灰皿の前で煙草を喫っている、と話され、
私達はお互いに笑いあったのである。
私は体力の衰えた身であるが、少なからず男の子であるので、
旅先でも女性のしぐさ、表情、言葉は何かと気になるのである。
『長崎歴史文化博物館』の館内の展示品の近くにある受付嬢の多くは、
少し話した限りであるが、綺麗な顔立ち、容姿もよく、
私は心の中で、長崎美人だなぁ、と呟(つぶや)いたりした。
雲仙温泉の滞在した観光ホテル内で、
宿泊されている佐賀県の60代前後のご婦人たちと何気なく数分話し合ったのであるが、
別れ際に、佐賀県のどの辺にお住まいですか、と私は訊ねたのであるが、
少し私は市の名称の言葉が聴き取れず、
最後に、お茶の美味しい所ですわ、というのは解かり、
お互いに微笑んだりしたのである。
私は無念ながら見かけた限りであるが、
長崎市内の市電の車中に於いて、
ツーピースを召した30代前半のご婦人が、7歳前後の男の子を連れていた。
少し陰のある表情を湛(たた)えて、しぐさが妖艶であったので、
私は数秒見惚(みと)れたのである。
私は宿泊した観光ホテルのフロント、食事処の若き仲居さん達、
とたびたび談笑したりしたが、
私に対してはお客様のサービスのひとつ、と承知しているが、
長崎の女性もまぎれなく素敵な人が多い、と私はこうして綴りながらも、
思い出しては微苦笑しているのである。
《終り》
