自然に寄り添った暮らしをしたいとの目標を立て、それに沿って備前市吉永町の古民家を探し出したいうのは、よくよく考えてみると思い違いだった。
あの古民家と出会ったことにより、心の中の此処かで望んでいたように思われる生き方がはっきりしてきたというのが正しい。
吉永町の古民家にたどり着くまで、都合5回に渡り、岡山県内の古民家十数件を見て回った。
事前に不動産屋のHPに掲載されている物件情報を閲覧し、気になるものを選び出し、不動産屋と連絡を取り、日時と待ち合わせ場所を決めるという手順を踏んで出かけていた。
実は、4回目まで同じ不動産屋の同じ営業の方にお世話になっていたのだが、いずれの物件も帯に短し襷に長しで、しっくりこないのだ。
4回目の最後の物件を見終わった時、その営業の方に峰野さんにご案内できる物件は、うちにはありませんと言われた。
こちらも相済まない気持ちになっていたので、もう次はないなと帰りの車中、女房どのと話したものだった。
だが、そこから新たな展開が待っていようとは、その時、知る由もなかった。
その最後に案内された物件は、古民家を全面的に改装したもので、最新の設備が導入されていた。心を動かされはしたが、ただいかんせん、いかにも狭かった。
この物件の売主は以前、案内してもらった不動産屋に勤めていた方だそうで、現在は他の不動産屋に勤めているとの話だった。
帰宅した後、その「他の不動産屋」のHPを訪ねてみると、魅力的な古民家がたくさん紹介されていた。
それから1か月半後の今年の3月中旬、三女・くるみさんが暮らす徳島に女房どのと2人で行った帰り、予定していたわけではなかったが、せっかく徳島まで来たのだから1軒だけでも見ていこうかと、くるみさん宅を発つ日の朝、急きょ「他の不動産屋」に電話を入れた。
そこから思わぬ展開が待っていた。