『夜来 風雨の声 花落つること 知る多少』のような雨と風だった。お昼ごろになるとお日さまが顔を出してきた。Tシャツ1枚でいいくらいに暑い。珍しく固定電話が鳴る。さて、だれからだろうか?と思う。日曜日はセールスも多い。地元の時計屋さん(宝石店)からだった。4月末にできると言う、指輪とネックレスのヘッドができたという連絡だった。
母が地元の呉服屋さんがつれてくる宝石商から指輪やネックレス、ブローチなどをたくさん買っていた。「まっちゃんには何も残せないから、宝石を買っておいた」と母は言う。しかし、どう考えても二人にいいようにおだてられて買ったとしか思えなかった。のこのこやって来ては、お昼など食べていったらしい。今思えば、それだけ母はさびしかったのだろう。そして、母の見得もたぶんにあったのだろう。二人は上手く分割にして、小さな紙に購入した日と支払った日をメモするだけだった。納品書も領収書もない。母が認知症になったとわかったのか、商品は売らなくなった。その商品がちゃんとしたものか鑑定してもらったのが、電話があった時計店だった。
私は宝石にはまったく興味がなかった。何点もあるネックレスなどを処分して母のベッドを新しくしようと思った。地元の良心的な時計屋さんだったので相談に行った。私が売るつもりの商品を上手くアレンジしてくれて私が使えるように提案してくれた。どうにも時代遅れのものは買い取ってくれた。もちろん、費用はかかった。でも、母が私のために残したと言うものは、上手く生き返った。出来た製品を手にして、私はとてもうれしかった。この人のいうとおりにしてよかったと。
お母さん、ありがとう!大事にします。