いつ読んだのか定かでない物語だった。おそらく高校時代か大学時代だろう。三十代中ごろの頃この本が読みたくなった。記憶を頼って探してみたが見つからず、本のことならなんでも というお二人に聞いてもこの本は聞いたことがない と言う。確か菊池寛の作品と調べてもない。先週のことだ、フェイスブックに「じいさんばあさん」というタイトルで紹介されていた。森鴎外の作品だった。何十年ぶりかの再会だ。なぜこの本が気になったのかは、今はわからない。「ある日、隠居所で暮らし始めた「なかなか立派な」爺さんと、爺さんに負けぬくらい品格のよい婆さんの来歴が静かに語られている。二人の暮らしぶりはまことによい。「二人の生活はいかにも隠居らしい、気楽な生活である。爺さんは眼鏡を掛けて本を読む。細字で日記を附ける。毎日同じ時刻に刀剣に打粉を打って拭く。体を極めて木刀を振る。婆さんは例のまま事の真似をして、その隙には爺さんの傍らに来て団扇をあおぐ。もう時候がそろそろ暑くなる頃だからである。婆さんが暫くあおぐうちに、爺さんは読みさした本を置いて話をし出す。二人はさも楽しそうに話すのである。」しかし、二人の生涯は激烈なものであったことがおいおい物語られる。爺さんが72歳、婆さんが71歳。隠居の生活は37年ぶりの二人の生活であった。」こんな話だ。
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