イギリスで核兵器開発の情報を東側のソビエトに提供した実在の女スパイの話がもとになっている「ジョーンの秘密」を観た。
ジョーンはソビエト側からの要求を拒否するが、実際に西側のアメリカが核兵器の製造に成功しそれを日本に使ったことに衝撃を受け、結果的にイギリスを裏切りソビエト側に情報を渡してしまう。
その後時は経ち米ロ以外にも核保有国が増えいくが、彼女が80歳を超えてから突然イギリス政府に逮捕される。彼女のしたことは国家への裏切りとして非難にさらされるが、彼女は自分の行為は平和のための信念に基づいたものだったと語る。
核兵器を東西両陣営で持つことでバランスが保たれ、結果的に日本で使われた後はどこも使うことなかったではないかというのだ。いわゆる核抑止論ということになるのだろうが、複雑な思いがする。
東西陣営がバランスを保つというなら両方が持たないことの方が理にかなっていると思うのだが。すべての国が持たずに均衡を保つというのは理想論にしか過ぎないのか。日本がアメリカの核の傘に下にいることを理由に核兵器禁止条約に署名しようとしないことにも疑問を持ってしまうのだ。
今年の夏もテレビで75年前の敗戦に関する番組があって、そのひとつに広島、長崎への原爆投下に至る日米の歴史上の経過を描いたものがあった。
日本の当時の政府高官がのちにイギリスの放送局のインタビューに「アメリカが原爆の開発に成功したことは知っていたがそんな残虐な兵器を使うとは思わなかった」と答えている。軍部の反対を押し切ってでも政治家が原爆投下に至る前に降伏の決断をしていれば・・・。
また当時核兵器の研究は日本でも行われ、結果的に資力、技術不足で頓挫したという話も出てきた。もし成功していたとすれば日本だって使っていた可能性を否定できないのではないだろうか。そんなことを考えさせられる作品だった。