旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

イカ飯とカニ飯と二世古生原酒と 函館本線を往く! ≪大沼~小樽編≫

2017-08-27 | 呑み鉄放浪記

 函館港には青函連絡船に就航していた旧国鉄の「摩周丸」が保存係留されている。
往時は桟橋から駅へと延びる長い長い通路に大きな荷物を抱えた旅客が列を成し、
車両甲板からはディーゼル機関車が貨車を引き出す光景が見られたことだろう。

 

5番線車止め脇に打ち込まれた函館本線0キロポストは北へ向かう旅の道標なのだ。 

トップランナーは07:10発の大沼公園行き。単行気動車は身震いひとつ走り出す。 

後続の長万部行きまでは1時間、秋の気配がしてきた大沼公園を散策しよう。
幾つもの小島を浮かべた大沼の向こうに、裾野を広げた駒ケ岳が青空に映えている。 

地ビールの "大沼ビール ケルシュ" を求めて後続の長万部行きに乗車、朝のビールは効く。

 

長万部では33分の長い停車。この時間を利用して駅前の新発田商店で森名物を求める。
小ぶりのイカにもち米を詰め、醤油ベースのタレで煮込んだ "いかめし" は、
甘辛い味付けで中身はもちもち、薄く切って粋な皿に盛ったら旨い肴になりそうだ。 

 森から長万部までは噴火湾岸を半周、4分の3周すると室蘭の町まで達する。
平坦で複線、継ぎ目のないレールだから、老朽化した気動車でも快適に疾走するね。
函館本線から室蘭本線が分岐する長万部は、かつては鉄道の町として大いに栄えた。
今では広すぎる構内に、気動車がぽつんぽつんと留置されている寂しいローカル駅だ。 

 

長万部駅にもまた名物駅弁あり、かなや本店の "かにめし" が有名だ。
倶知安行きまでは2時間ほどの待ち合わせ、駅前の「かなや食堂」で美味しくいただいた。

 

 長万部から先の函館本線(通称山線)は、1日に4本の鈍行列車しか走らない。
札幌行きの特急はすべて室蘭本線(通称海線)を往く。車両はやはり単行のレールバスだ。

長万部を発車するレールバスは、旧国鉄型の気動車と違って、喘ぐことなく走り出す。
函館本線は緩やかに左カーブしてニセコの山をめざす。
ボックスシートに品の良い老婦人とご一緒した。小さい体に重そうな買い物袋を提げ、
ふたつ目の無人駅で下車していった。母と同じくらいだろうか、どうかお元気で。

 

左手にニセコアンヌプリ、右手に羊蹄山を見ながら倶知安に到着。
ニセコやヒラフなど国際的なリゾートを控えて、思いがけず賑やかな駅前を作っている。
ここで4番手の小樽行きに乗り換える。この列車、北へ向かう旅ではじめての2両編成だ。

倶知安には二世古酒造が在って、ニセコ連峰から湧き出る雪清水を使って酒を醸してる。
残念ながら蔵を訪ねる時間は無く、20分ほどの乗り換え時間に駅近のコープ店で仕入れた。
2両編成の気動車が動き出すと、早速 "二世古 生原酒" のスクリューキャップを切るのだ。 

 
 

 余市にはニッカウヰスキー蒸溜所、云わずと知れた竹鶴政孝のウイスキー作りの原点だ。
竹鶴と妻リタが暮らした私邸の一部を観ることができる。歴史ある建造物は趣があります。 

余市で寄り道をしたので小樽到着は17:00過ぎ、空模様は雨、すでに薄暗くなっている。 

ぽつりぽつりと灯が入りはじめた小樽運河をカメラに収めたら、田中酒造を訪ねる。
小樽天狗山の伏流水と道産の酒造好適米彗星を使って酒を醸している。
明日一番の車中酒として "純米大吟醸 寶川" と、もちろんオリジナルの猪口を仕込む。 

 

18:30、快速エアポートで札幌に向かう。6番手のこの列車はこの旅初めての電車になる。
札幌に到着する頃は夜の帳が下りて、今宵は「すすきの」で呑むことになる。

函館本線 函館~札幌 268.3km

Lucky Summer Lady / The Square 1978