旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

大人の休日 桜花爛漫の武家屋敷と桧木内川堤

2021-04-24 | 旅行記

 "みちのくの小京都" 角館、武家屋敷の黒板塀に薄紅色のシダレザクラが可愛らしく映えている。
平年ではとても叶わない桜花爛漫の角館行、万全の態勢と細心の注意を払って、この風景に身を置きたい。 

 日本気象協会の tenki.jp によると角館の桜が満開を迎えたらしい。昨日からの雨も午前中で止むという。
という訳で(いったいどんな訳?)、大宮06:57発、こまち1号で北へ向かうぼっち旅に立つのだ。

「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」とは啄木。
県のシンボル岩手山(2,038m)、頭を雲で隠した成層火山が残雪を抱いて裾野を広げている。

東北新幹線を320km/hで飛ばしてきたE6系も、在来線区間に入るとガクッと速度が落ちる。
岩手・秋田の県境は勾配もカーブもキツイから、さしもの新幹線車両もそれなりに揺れるのだ。
したがって、朝ビールのプルトップリングを引くのに慎重になる。案の定少なくない量の泡を吹いた。

雨、上がったね。角館駅から歩くこと10分、歴史ある屋敷が点在する「武家屋敷通り」にやってきた。
約450本のシダレザクラがお屋敷から通りへと美しく枝を垂らす。樹齢300年を超える古木の花は白に近い。

角館樺細工伝承館の辻までやってきた。シダレザクラの薄紅のグラデーションが美しい。

武家屋敷の重厚な屋根と黒板塀を背景に、淡いシダレザクラは儚い美しさを際立たせている。

武家屋敷の町並みに溶け込んで和の風情の食事処がある。10:00から開いているのでひるまえの一杯を。
"比内地鶏" の正肉とねぎ間を焼いてもらって、酒は羽後長野、鈴木酒造の "秀よし 花綵の里" をいただく。

そして "稲庭雪見うどん" を啜って温まる。 雪見とはとろろを雪に見立てているらしい。姫竹に春を感じるね。
「花冷え」って季語(日本酒の温度も)があるけど、桜花爛漫の今日も温かな饂飩が欲しくなる肌寒さなのだ。

 角館のもう1つの桜の名所「桧木内川堤」には、全長2kmにわたるソメイヨシノの花のトンネルが続く。
みごとに色づいた約400本の桜並木は、1934(昭和9)年に現上皇の御誕生記念として植樹されたそうだ。

ところでこの堤に魅力的な助演女優を見つけた。一群の淡い黄色の水仙が可憐に美しく脇を固めている。

緩やかな川の蛇行に沿って一分の隙もなく続くヨメイヨシノの様は、春の朝日に染まった雲の様にも見える。

2時間少々の駆け足の花見(昼酒も一杯やったけど)を終えて角館駅へ。そしてここにもシダレザクラが。
満開を迎えたシダレザクラ、ソメイヨシノ、そして水仙、とても素敵な風景に身を置いて満足の時間だ。
東京方面には戻らず、11:42のこまち9号に身をゆだねる。折角だから弘前まで足を延ばそうと思う。

抱かれたい、もう一度 / 矢沢永吉 1981