旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

旅の途中の酒場探訪 名古屋「魚河岸割烹 鮮」

2021-10-30 | 津々浦々酒場探訪

 200万都市の駅前の一等地に市場があるっていうのがちょっとした驚きだ。
広さ約4,000坪、約300の店舗が並ぶまさに名古屋の台所が「柳橋中央市場」なのだ。
一般的に早い午後には閉まってしまう市場だけど、ここは夕方になっても人の出入りがある。
市場の中に屋台よろしく何軒かの酒場が提灯を灯すからだ。っと呑み人もふらふらと誘われてみる。

それこそ一見のオッサンが二人カウンターに座るもんだから、無口な大将はますます無愛想だ。
突き出しは “ほうれん草とにんじんの白あえ”、んつこれはなかなか上品な、それなりの料理屋の味だぞ。
僭越ながらこれは褒めずにはいられない。それでもニコリともしない大将、黙々と柳刃を操っている。

その柳刃から繰り出された刺身が重厚な器で登場、蕩けるような大トロと甘いブリが美味しい。
白身は酢橘をちょっと絞るといい。この酢橘に水を向けると一瞬大将の表情がくずれた。
どうもタネが多いこの酢橘、大将が趣味で自家栽培しているらしい。

手元は諏訪の酒 “真澄” に代わっている。すっきりとしたでも柔さも感じる辛口生一本がいい。
十銘柄ほどの地酒ラインナップは、料理に合わせた大将のこだわりだろうか、次はこの話で口説こう。

カラッと上品に揚げた天ぷらが、大将の菜箸でカウンターの黒い平皿に手際良く盛り付けられる。
海鮮の店らしく、大振りの海老とホタテ貝柱がいい、カボチャもホクホクで美味かったなぁ。
二杯目は白山の “手取川”、純米酒nijiは滑らかな口当たりで料理に寄り添う食中酒だ。
ところで隣に座る先輩はと云うと、焼酎水割りに大将の酢橘を所望して、おっお見事です。
どうやらカウンターで飲むことを受け入れられた私たち、次の名古屋出張でも再訪必至なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
悪女 / 中島みゆき 1981