旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

旅の途中の酒場探訪 札幌「第三モッキリセンター」

2022-12-28 | 津々浦々酒場探訪

 札幌出張の日は大雪警報に見舞われた。確か去年もそうだった。時計台にも横殴りの雪が容赦ない。
支社のメンバーとは昨晩会食したから、今宵はひとりバスターミナル裏の「第三モッキリセンター」を訪ねる。

ガラッと引戸が思いがけず大きな音を立てる。先客の視線が一斉にこちらを射る。えっ、これ不味い雰囲気か?
身体は凍えても先ずは “生ビール”、アテに “厚揚げ焼き” ではじめる。生姜醤油でカリカリと美味しい。

赤ら顔のご常連達は最早一介の余所者には関心を寄せていない。さっきの悪い予感は杞憂に過ぎなかったのか。
横に長いコの字カウンターの中、エプロン姿の昔のお嬢さん達はこんなボクにも優しく世話を焼いてくれる。

コップ一杯の焼酎と古いアイスペールが運ばれて、ホッピーを楽しむのにかなり自由度が高い。
小さな土鍋がグツグツと “とん鍋” が登場、優しい味噌味に芯から温まる。むせたのは振りすぎた七味のせいだ。

アテは “にしんきりこみ”、これには目が無いんだよね。唯一の道産の酒 “千歳鶴” の生酒のキャップを開ける。
今日は “鮭のいずし” があるよとお姐さん。こういうお奨めには乗ったほうが良い。
沿岸部の郷土料理は、米の甘みと乳酸の酸っぱさのバランスが絶妙で、これってなかなか美味い酒の肴だ。
最後の一杯に合わせて “ザンギ”。醤油ベースの甘辛いタレに漬けこんだ鶏唐は日本酒のアテに申し分ない。

大きな荷物を抱えた親父さんがオーバーコートの襟を合わせて出ていった。夜行バスで故郷へ帰るのだろうか。
さてっボクもそろそろ。堪能した昭和な大衆酒場を出る。固まる雪を踏み締めてぶるっとくる呑み人なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
北酒場 / テレサ・テン 1982