太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

たまご神話

2013-01-16 08:22:35 | 食べ物とか
日本人にはたまご好きが多いと思う。

たまごかけご飯用のお醤油が売られているぐらいだから、生卵が好きな人も多いのだろう。

私の叔母は、生卵は想像しただけで「ウエー」となる、というから、そこは意見が分かれるところだろうけど。


日本でみたテレビ番組のラーメン特集で、

ラーメンの具に「煮たまご」があると、ぐっと人気があがると言っていた。

煮たまごは、白身には味と色がついているのに、黄身は半熟。

その半熟の黄身が、ラーメンのスープの味をともなって口の中でトロリと溶けるのが美味しい。



オムライスだって、卵をたくさん使って特大オムレツを作り、それを炒めたご飯に乗せて

てっぺんにスーッとナイフを入れると「とろとろとろーーー」と割れる映像は圧巻じゃないか。



私もたまごは好きだ。

仕事にランチを持ってゆく日には、絶対にたまご焼きが欠かせない。

鮨屋では最初と最後にたまごを食べる。

朝の気分で目玉焼きを食べるときには、黄身は半熟がいいし、

おじやを作って、最後に卵をサッと溶いて卵とじにしたら、生過ぎず、火が通り過ぎずの状態にするのに神経を使う。



アメリカでは、たまごの生食は禁じられているからというのもあるかもしれないが、

日本ほどのたまご神話はない。

とろり半熟卵の映像が出ても、ため息は漏れないし、お鮨のたまご人気もいまひとつだ。



先日、日本食レストランで私は鍋焼きうどんを頼んだ。

いかにも鍋焼きうどんにピッタリな肌寒い夜で、

出てきたものも、ほぼ正しい鍋焼きうどんに近かったので、私の胸は高まった。



うどんは直径20センチほどの鉄鍋の中でぐつぐつ煮えており、

その真ん中に生卵が乗っていた。

おつゆの温度で、卵が少しずつ、いい感じに煮えてゆく。

先に他の具を食べつつ卵の様子を観察していた。


すると夫が、「少しちょうだい」と言って鍋ごと自分のほうに持ってゆき、

戻ってきた鍋を見ると、 卵がなかった。


大げさでなく、私の頭は一旦思考を中止した。

まさにいい感じで煮えてきた頃であろう卵が、消えた。



「たまご、食べた?」

今更聞いても詮無いことだが、聞かずにはいられなかった。

「食べたよ」


私は、怒りを通り越して悲しく、むなしくさえなってきた。


「あれは鍋焼きうどんの中で1番大事な具なんだよ!あとで食べようと思ってとっておいたんだから・・・」


その時の夫の、申し訳なさそうな顔といったらなかった。

一緒にいた夫の両親が、このやりとりを見て大笑いし、そして私に激しく同情した。

夫に悪気はない。半熟卵の価値がわからないアメリカ人を責められない。

しかし今でも私は、白身の外側がうっすら白く煮えた、中はとろりと半熟の卵が、

うどんのおつゆにあいまった状態を想像して、悔しさがこみあげてくるのである。






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