太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

サイン

2015-05-03 15:32:01 | 不思議なはなし
前の結婚時代に私と相手が、車で静岡から仙台あたりまで旅行したときのことだ。

高速道路に乗るときに取ったチケットをどこに保管するかは

私にとって大事なことだった。

その辺に置いて、風で飛ばされたら大変だし、シートの下なんかに滑り落ちたら厄介だ。

降りる時にチケットがなかったら、相手に何を言われるか。

それで私は考えに考え、お財布にしまった。

ところが、途中でパーキングエリアのトイレに行ったときに、

お財布を見たらあるはずのチケットがない。

どこにもない。車に戻って、隅々まで探したが、ない。

青くなる、というけれど、青を通り越して真っ白になった。

相手はカンカンに怒って、口もきかない。

ないものは仕方がないので、高速道路を降りる時に「なくした」と言い、

事務所に連れて行かれた。

住所氏名あらゆる項目を書類に書き、昨夜泊まった場所や、今日行った所も聞かれた。

たまたま高速道路に乗る直前にガソリンを入れていて、そのレシートがあったので

私達が乗った場所が嘘ではないことを信じてもらえて、最高金額を払わなくても済んだ。

ほうほうの体で車に戻ると、怒りまくった相手が、シートをひっくり返す勢いでチケットを捜していた。



今の私だったら、チケットの保管場所で神経質になることはないだろうし

なくして夫が怒っても、「そんなに大事なら自分で保管すればいいでしょっ」ぐらい言うかもしれないし、

今の夫なら、一緒に事務所に来てくれるに違いない。


あの頃、私はいつだって相手を怒らせないように

細心の注意を払って暮らしていた。

私には思いもよらないことで怒り、そうなると何がなんでも黙ったままで

私が夕食を用意しているのを知りながら、ふいと出かけて外で済ませてくる。

二人しかいないのに、何日も口をきかないことには耐えられないから、私が謝り倒す。

そんな面倒なことになるぐらいなら、怒らせないように気をつかうほうがいいと私は思ったのだけど、

そもそもそれが間違いであった。


私がやるべきだったのは、まず自分と向き合い、自分を大切にすること。

相手と向き合い、理解しあう努力をすること。

それがだめなら、或いはそれをしたくないなら、さっさとその結婚をやめること。

私はそのどれも、やらなかった。

ただただ、臭いものに蓋をし続けて、11年かけて中身がない美しい箱を作っていたのだ。


私は何を守りたかったのか、今もわからない。

私達が何を築いてきたのかも、何を築いてこなかったのかもわからないまま

とにかく何かが怖かった。




振り返れば、大勘違いをしてきたけれども、

100%の真っ正直さで、その大勘違いを生きていたなあと、その時々の私がいとおしく思う。



高速道路のチケットの話には後日談がある。

なくした翌日、お財布からチケットが出てきた。

確かに探した場所から。

その生き方でいいの?というサインは、アラレのようにやってきていた。




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