朝6時半ごろ、友人から電話がきた。
「朝早くにゴメンネ、忙しい時間だったらゴメンネ」
早口でまくしたてる。私が3時半に起きていることは承知のはずだが。
「どうしたー?」
「実はしょーもない話なんだけどさ」
友人の話は、こうである。
昨夜、ふと3時ぐらいに目が覚めて、トイレの水が流れている音に気づいた。
友人は夫婦二人暮らしで、グレートデン(犬)を飼っている。
旦那さんは出張でしばらく留守にしている。
家にいるのは友人と犬だけなのに、誰かがトイレを使っているようだというのだ。
以前、旦那さんが眠くて先に寝るといって2階の寝室に行って、しばらくしてからトイレを使う音がしたことがあった。
しかしそのトイレは寝室についているトイレではなく、寝室から出て廊下を歩いたところにある。
部屋を出た音もしないし、旦那さんがトイレに起きたのなら寝室のトイレを使うだろう。
翌日、旦那さんに確認したら、トイレには起きていないといった。
「そのときは、おかしいねえといって終わったんだけど、昨日は私一人だからさ、
気持ち悪くて、うちに隠し部屋があって誰かがいるんじゃないかって壁をたたきながら探したわよぅ」
「隠し部屋って、あんた何年そこに住んでンのよ」
「だって前にそういう小説読んだんだもん」
「万が一、人がいるんだとしたら何のためにいるのさ?ただ隠し部屋に住んでいるなんて、考えにくいし、
泥棒だったら昼間は留守なんだし、さっさと物をとって逃げるでしょうよ」
まあ、彼女の気持ちはわかる。一人でそんなことになったら、さぞや気持ち悪かろう。
「それでさ、あんたんちのダーリンがメネフネ見たって言ってたじゃない?だからそれもメネフネなのかなあと思って」
メネフネというのはハワイに古くからいるといわれている妖精である。
妖精といっても、見た目は「ちっさいおじさん」タイプ。
言い伝えによると、メネフネは一晩で養殖池を造ってくれたり、まるで「森のこびとさん」のようだ。
夫は高校生のときに、この家の庭でメネフネらしきものを見た。
そして数年前、夫だけが家にいるときに、衣類乾燥機をまわしながら他のことをしていて、
気がつくと乾燥機の中のものがきっちり外に出ていた。
おかしいなあと思いつつも、洗った運動靴を乾燥機に入れておいたら、またその靴もしっかり外に出してあった。
家事手伝いをしてくれるなんて、メネフネに違いないということになった。その話を友人が持ち出したのである。
「私は人間説よりもそっちのほうがまだ信じられるけどネ」
「じゃあさ、なんでトイレ流したんだろう」
「洗ってくれたんじゃないのー」
「あ!ゲスト用のトイレなんかずいぶん掃除してないかも・・・人なんか来ないもん」
「ほらねー、だから見かねて掃除してくれたんだよ」
「そうだよね、そうだよね、人間じゃないよね、メネフネだよね」
「いや、確証はないけど、隠し部屋があるとも思えないしさぁ」
またトイレがひとりで流れたら電話ちょうだい、といって電話を切った。
何が怖いって、人間が1番怖い。
もののけより妖精より。
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「朝早くにゴメンネ、忙しい時間だったらゴメンネ」
早口でまくしたてる。私が3時半に起きていることは承知のはずだが。
「どうしたー?」
「実はしょーもない話なんだけどさ」
友人の話は、こうである。
昨夜、ふと3時ぐらいに目が覚めて、トイレの水が流れている音に気づいた。
友人は夫婦二人暮らしで、グレートデン(犬)を飼っている。
旦那さんは出張でしばらく留守にしている。
家にいるのは友人と犬だけなのに、誰かがトイレを使っているようだというのだ。
以前、旦那さんが眠くて先に寝るといって2階の寝室に行って、しばらくしてからトイレを使う音がしたことがあった。
しかしそのトイレは寝室についているトイレではなく、寝室から出て廊下を歩いたところにある。
部屋を出た音もしないし、旦那さんがトイレに起きたのなら寝室のトイレを使うだろう。
翌日、旦那さんに確認したら、トイレには起きていないといった。
「そのときは、おかしいねえといって終わったんだけど、昨日は私一人だからさ、
気持ち悪くて、うちに隠し部屋があって誰かがいるんじゃないかって壁をたたきながら探したわよぅ」
「隠し部屋って、あんた何年そこに住んでンのよ」
「だって前にそういう小説読んだんだもん」
「万が一、人がいるんだとしたら何のためにいるのさ?ただ隠し部屋に住んでいるなんて、考えにくいし、
泥棒だったら昼間は留守なんだし、さっさと物をとって逃げるでしょうよ」
まあ、彼女の気持ちはわかる。一人でそんなことになったら、さぞや気持ち悪かろう。
「それでさ、あんたんちのダーリンがメネフネ見たって言ってたじゃない?だからそれもメネフネなのかなあと思って」
メネフネというのはハワイに古くからいるといわれている妖精である。
妖精といっても、見た目は「ちっさいおじさん」タイプ。
言い伝えによると、メネフネは一晩で養殖池を造ってくれたり、まるで「森のこびとさん」のようだ。
夫は高校生のときに、この家の庭でメネフネらしきものを見た。
そして数年前、夫だけが家にいるときに、衣類乾燥機をまわしながら他のことをしていて、
気がつくと乾燥機の中のものがきっちり外に出ていた。
おかしいなあと思いつつも、洗った運動靴を乾燥機に入れておいたら、またその靴もしっかり外に出してあった。
家事手伝いをしてくれるなんて、メネフネに違いないということになった。その話を友人が持ち出したのである。
「私は人間説よりもそっちのほうがまだ信じられるけどネ」
「じゃあさ、なんでトイレ流したんだろう」
「洗ってくれたんじゃないのー」
「あ!ゲスト用のトイレなんかずいぶん掃除してないかも・・・人なんか来ないもん」
「ほらねー、だから見かねて掃除してくれたんだよ」
「そうだよね、そうだよね、人間じゃないよね、メネフネだよね」
「いや、確証はないけど、隠し部屋があるとも思えないしさぁ」
またトイレがひとりで流れたら電話ちょうだい、といって電話を切った。
何が怖いって、人間が1番怖い。
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