太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

喉もと過ぎていつも忘れる

2017-10-25 07:58:14 | 日記
日本へ行く飛行機で、私はしたたか乗り物酔いをして閉口した。

私はしょっちゅう乗り物に酔う子供だった。

父の運転する車では後部座席でいきなり吐いて、隣の姉に嫌がられた。

遠足は楽しいが、バスは苦手。

小学校低学年の頃は、バスなど使わない遠足があったし、バスも旧式で窓が全開できたが

バスが進化してくると、なぜだか窓が全開できなくなったりして、酔う子供にはつらかった。

気の持ちようだと激励されたり、酔わないツボを押したり、

酔い止めの薬を飲んだ記憶があまりないのは、車に酔うのは思い込みのせいだと、家族も自分も思っていたからだろう。



自分で車を運転するようになって、車には酔わなくなった。

バスは、車内の独特の匂いに「む・・・」とするけれど、本さえ読まなければ2時間ぐらいは平気だ。

しかし問題は飛行機である。

乱気流と、体調によっては降下していくときもよくない。

酔い始めのときは新鮮な空気が必要なのに、飛行機では窓を開けるわけにもいかない。

通路側の座席ならいいが、窓側や真ん中になってしまったら、吐きそうになって席を立つたびに人に迷惑だし、

かといって座席で吐くのはもっと迷惑だし、座席のポケットの「エチケット袋」をチラチラ見ながら

我慢できるぎりぎりまで、まるで尿意のように押し寄せては引く波に耐える、その時間の長いことといったらない。

二十代の頃、突発性難聴という病気になり、そのときの精密検査で耳の三半規管がちょっとおかしいということがわかった。

「乗り物に酔うでしょう」

医者はそう言って、でもこれは治るものではないのだと付け加えた。

酔うのは気の持ちようではなかったのだ。

そんなわけで、大手を振って飛行機に乗るときには酔い止めの薬を服用するようになったのだけれど

これが効き過ぎる。

北海道に行ったとき、現地に着いても眠くて眠くて、どこを歩いて何を食べているのかも朦朧としてわからなかった。



あれから数十年。

薬の量を調節しながら、酔ったり酔わなかったりを繰り返し、

だんだん慣れて、わざと薬を飲まないことが増えてきて、なんかもう大丈夫かもと思っていた矢先の

今回の乗り物酔いである。

幸い、機内が空いていて、三列がけの椅子に横になることができたが、

食べ物の匂いをかいだだけでこみあげてきて、せっかくの機内食が一口も食べられなかった。


子供の頃から酔い続けて、酔うことのつらさを誰より知っているというのに、

その辛さをすぐに忘れてしまう私はアホだ。

酔ってもたいしたことないかも、などと思ってしまう理由がわからない。

成田に着いても、まだ酔っていた。

トイレで吐きたいのだが、10時間以上なにも食べていないので出るものもない。

空気だけが胃から げえー と出てくるだけ。

日本で酔い止めをいくつも買い込み、帰りはしっかりと服用した。

喉元すぎてすぐに忘れる我が身のなさけなさよ。











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