太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

アホかいな、と思うとき

2019-09-30 14:38:36 | 日記
明日は休みという、晴れ晴れとした気分で帰宅したら、
夫がすっかり酔っていた。
土曜日、夫は普段より少し早めに帰ってくるので、すでに2時間ぐらいは飲んでいたのだろう。
私が、どうしても嫌だと感じることに、むりやり平気になれるようにしないで
嫌なものは嫌でいい、たとえそのことで毎回喧嘩になったとしても
それはそれでいいのだと気づいたばかり。

だから、
帰宅すると夫が酔っている→食後の団欒を一緒に過ごせない→
同じことを繰り返す夫に腹がたつ、の図式で私は遠慮なく不機嫌になった。

夫はまっすぐに歩くこともままならないが、
私に気を遣って、なんとか一緒に夕食を食べた。
が、食事中にスープのボウルを倒し、さらに、椅子から立ち上がろうとして
バランスを崩し、スローモーションのように床に倒れこんだ。
床に横たわっている夫の顔に向かって、
「なんでこんなに飲むのさ?ねえ、なんで?なんで同じこと繰り返すわけ?」
まくしたてると、夫が目をつぶったまま言った。
「ネットで仕事を探したんだけど、安い仕事ばかりなんだよぅーー」



痛ッ!!!!イタタタ!!!!


そこは私が一番痛いところじゃないか。
頼むからもう仕事を辞めないでくれ、と願い続けて10年あまり。
持病のウツを繰り返し、
ようやく自然相手の、もっとも夫に合っている仕事について2年。
けっこうたのしく続けていると思っていたのに、いったい何が嫌なんだ。
不機嫌を通り越して、また無職になるかもしれない恐れに途方にくれている私に、
目を閉じたままの夫が言う。

「僕はじゅうぶん稼いでないよぅー・・・・・ほかにいい仕事探したけど
ないんだよぅー」(べろべろに酔っている)
「それがお酒を飲んだ理由?」
「うん、そーー」


アホかいな。
と思ってしまうのは、私がお酒を飲まないからか。


それにしても、そんなことか。
夫は以前のオフィスワークの仕事に比べたら、そりゃあ収入はがっくり落ちたけど
借金もないし、欲しいものは買えるし、旅行にも行けるし
お金がなくて困ったことなどない。
私は夫の仕事が好きだし、それに私よりはずっと稼いでる。
私はそのことをコンコンと言い聞かせた。
アイスノンを夫の頭の下にあて、ダイニングテーブルの横の床に倒れたまま
放っておいた。
そして私は2階に行って、自分のことをやり始めた。

時々、様子を見に行くと、夫は床で子供のようにスヤスヤと眠っている。

目の前に展開されるできごとに、
過去の嫌な記憶を重ねて作り上げた即席ドラマに自分ではまる。
まるで一人芝居だ。
音楽をかけ、作品を仕上げる手作業をしていると、心が落ち着いてくる。


翌日、すっかり素面に戻った夫が、
「トビアス(上司)が給与を上げてくれるんだってさ」
という。
「上げてくれるのに、なんでほかの仕事探したりするのさ?」
「暑いしさ、泥だらけだしさ、機械は壊れるしさ」


アホかいな。
と思ってしまうのは、私が夫の身になって考えられないからだろうか。



「今まで、人間関係でどんなにつらい思いをしてきたか忘れた?
そんな場所に、もう戻ることないじゃん」
「そうじゃなくて、something new、だよ」

something new で仕事をくるくる替えられたんじゃ、私の身が持たん。
夫は、私が逆立ちしたってかなわない、すごく良いところがたくさんある。
だから私は夫をとても尊敬しているのだけれど、
夫の感覚が、あまりに私と離れている場面に出会うたび
とうていよじ登れない壁を目の前にしたような気分になって

アホかいな。

とため息とともに言うしかないのである。