太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

私の面の皮

2023-04-06 13:14:07 | 英語とか日本語の話
12年前に私がハワイに来た頃は、英語を話すよりも書くほうが楽だった。
それが今は、書くよりも話すほうが何倍も楽だ。
その理由は、英語が上達したというよりも、正しい英語を話そうとしなくなったからだと思っている。

頭で作った英文を話すと、会話についていけなくなる。
相手の話していることを一語一句理解しようとして、それができないことに打ちのめされる。
最初の1年半は、そんなふうに目の前にそびえたつ言葉の壁の下で途方にくれていた。
英語さえちゃんと話せるようになれば、どんな仕事もできるのにと、英語が第二言語の大人向けのスクールを探したりもした。
しかしそれは、何も行動を起こしたくない臆病の言い訳でしかなかった。
英語も話せないのにガイジンと結婚した私が、今さら英語のスクールもなにもないもんだ。
そして思い切って最初の1歩を踏み出して、今がある。


先日、夫の叔母に用事があって電話をしたら留守電で、仕方がなくテキストメッセージを送った。
あとで叔母に会ったら、

「シロは自由に話すように書くのねー」

と言って、笑った。
たまに日本人のクルーと船に乗ることがある叔母は、彼らがきっちりした英語でメッセージを送ってきたり、ちゃんとした英語で話すのを知っているのだ。
なるほど、言われてみればそうだ。
話し言葉では、前置詞が抜けたって、違ったってどうってことないし、疑問文にしなくても語尾さえ上げれば足りてしまう。
それをそのまま文字にするから、私の英語は規格外英語なのだ。

今はもう、頭で英作文することはない。
口をついて出てきた言葉をつなげているだけだ。
相手が言っていることが完全にはわからなくても、打ちのめされない。
理解できた単語を瞬時に繋ぎ合わせて憶測するから、見当違いな受け答えをすることもしょっちゅうだ。
それでも平気だ。
同僚たちの話なんか、時に半分ぐらいしかわからない。
わからなくても、「ワーオ!」とか「クール!」とか、相手が言ったことを反芻してお茶を濁している。


私が学んだことは、三つ。

1.とにかく大きな声ではっきり話す

日本人は全般的に声が小さいから、正しく話しても伝わらないのだ。
私の声は、ずいぶん大きくなった。
間違っていても、大きな声ではっきり言う。堂々としていると、ヘンテコでも笑って済ませられる。これは本当だ。

2.表情を豊かにする

日本人は表情に乏しいといわれる。
見知らぬ人とエレベータで乗り合わせた時、ふと目があったとき、ニッコリと微笑みかけてくるのは決まって外国人だ。
オーダーするとき、お金を払う時、パッと笑顔になったらそれだけで空気ががらりと変わる。先に笑ったもん勝ち。

3.いちいち気にしない

よく聞いていると、けっこういい加減な英語を話している人たちがたくさんいる。
職場でお客さまが「日本人?」と聞く。そうだと言うと、「やっぱね、アクセントがね」と言う。「そうよ、日本人だもの」とシラっと私は言う。
10年前の私なら、いじけていたところだ。
日本人なんだから、日本語のアクセントがあったっていい。そういうアンタはどうなの、英語以外何を話せるっての。と心で思ってひそかに留飲を下げている。



40過ぎて英語を使い始めたにしては、私はよくやってる。
私の面の皮は、この12年でどこまで分厚くなっただろうか。