今日の記事は長くなるかも。オカルト系が苦手な方はスルーしてください。
呑気に散歩から戻り、夕食を済ませてホテルの部屋に戻った。
夫がシャワーを浴びている間、私はベッドに寝転がって本を読んでいた。
シャワーのあとしばらくしたら、なんだか夫の様子が変だ。
うろうろと歩きながら、しきりにネガティブなことを言い始めたのだ。
「僕は良い息子じゃなかった」
「なんて愚かなんだ、僕はどうしようもない」
しまいには、義両親に謝ってくると言って部屋を出ようとする。
一足先にワシントンDC入りしていた義両親は、同じ階の部屋にいる。私はこんな姿を彼らに見せたら心配するだけだと思い、引き止めた。
なんとか横にならせて、落ち着かせようと試みる。
私にはわかっていた。夫は完全になにかに憑依されている。
仰向けに寝た姿勢で、夫のネガティブは止まらない。おまけに、私は意識はしっかりあるのに、身体が思うように動かなくなってきた。
あとから思うと、あれは金縛りみたいなものだったのかも。
「ふっ、52歳か。案外短い人生だった。これからもずっと一緒にいたかったけど、ごめんね」
なんだ、死ぬ気か?
私はうつ伏せになったまま動けないので、私の天使たちと夫の天使たちに真剣に祈った。おいおい、助けて助けて助けてーーーーーーー!
私は必死に言葉で夫を励ます。
そうしていると、義父から夫に電話がかかってきた。基本的に別行動しているので、今日は何をしたのか、というような話だったのだが、義父は夫の様子がおかしいのに気付いた。
電話を切ったあと、義両親が部屋のドアをノックした。
「おとうさんだよ、開けてあげて」
私は動けないので、そう言うと、困ったようにおろおろして会いたくないと言う。
「とにかくドアを開けて!」
ようやくドアを開け、義両親が入って来た。
「ごめんね、僕は悪い息子だよ、時々無視したりしたかも」
寝た姿勢のまま、そう言う夫を義父がなだめる。
「何を言ってる、そんなことない。無視したことなんかないし、いつだって良い息子だよ」
彼らはしばらくこの部屋にいる、と言って30分ほどいたのだが、もう部屋に戻っていいと言い張る夫に負けて、何かあったら必ず電話して、と言い置いて帰った。
義父が電話をくれたのは、天使のおかげ。私はそう思っている。
義父は100%愛の人で、義父が来てから少し落ち着いたように見えた。
しかし、義父を帰して、再びパワーアップ。
うつ伏せで動けないまま、死ぬの、自分はバカだの延々聞かされて、こっちの気分も滅入って来るし、このまま誰かに乗っ取られて戻れなかったらと思うと焦りに焦る。
まったく天使たち、これだけ頼んでるのに何とかせーよ!と、焦りが怒りに変わった時、それは起きた。
動けないはずの私がガバリ!と起き上がり、夫の上に馬乗りになった。
夫の顔の前と、両肩の3か所で、大きく1つずつ拍手をした。自分でもなぜそんなことをしているのかわからない。
「OK,OK,OK(わかった、わかった)」
夫は突然のことに驚いてそう言ったが、かまわずに夫の両肩を両手でしっかり掴んでベッドに押し付け、
「Who are you?What is your name?(おまえは誰だ。名前は?)」
と、夫の目を睨みながら、低くドスの効いた声で3回繰り返して聞いた。
夫の目は、初めは驚き、そしておびえたようになって、目が泳ぎ始めた。
その時の顔は、確かに夫ではなかった。そして、
「〇〇・・・・」
と、男の名前を言った。(覚えているけど、何となく書きたくない)
「〇〇。OK,Go home!(〇〇だな。よし、家に帰れ!)」
そのあと、夫の隣に横たわって、
「△△(夫の名前)のオーラの外側を、真実の愛の黄金の光でしっかりシールドしました。△△のオーラの内側に存在できるのは真実の愛だけで、それ以外のものは元いた場所に戻りなさい」
と、具体的にイメージをしながら繰り返し唱えた。
これは、1日に何百人という人に会う私が、職場に行く車の中で自分に対して唱えるもので、自分のときには「元いた場所に戻ります」と宣言口調なのだけど、この場合は命令形。
唱えながら、夫の額、第三の目のあたりに手をかざした。これも、なぜそうするのかわからないままだ。
夫は、ネガティブなことを言うのをやめたが、まだ本来の夫ではない気がする。
ランチをした店でもらってきた、ほんの爪の先ほどの塩が入った袋をあけ、首の後ろに振りかけた。
再び、唱えながら、どのぐらいそうしていただろう。その部屋は隣の部屋とドア続きになっており、何家族かで使えるようになっている。
むろん施錠されているそのドアのあたりから、「シュッ シュッ」というような音がずっとしていたが、私は疲れていて、頭にも来ていた。
「うるさーーーい!もう怖くもなんともないんだよッ!!」
私はいつのまにか眠ってしまった。
翌朝、夫は、
「古いホテルだから、いろんなのがいるんだろうね」
などと言っていたが、その日は義両親に誘われて、第二次世界大戦メモリアルや第一次世界大戦メモリアルなどを歩いたせいもあり、今ひとつ本来の夫ではなかった。
こんな時に、本当はそういう場所には行きたくなかったのだけれど、昨夜のことに一切触れない義両親に、こんな話ができようか。
その夜も、その次の夜も、寝る時に夫を真実の愛で包んだ。
「真実の愛」
と言っててのひらを夫の胸にあてると、私の背中からゾワゾワー・・・と何かが這い上がって来る感じがあった。
結婚して16年。
遅ればせながら気づいたこと。
この人、もしかして憑依体質???
過去にも、ライブハウスで憑依されたことがあったっけ。
そして旅行に行くときには、塩持参。塩、必須。今さらだけど。
夫が完全に夫に戻ったのは、3日後のインディアナ州に行ってから。
ホワイトハウスの裏手に広い公園があり、残りの二日はその公園内のベンチで多くの時間を過ごした。
緑があふれて鳥がさえずり、空気は冷たいが太陽が暖かく、ワシントンDCの中でここだけが深呼吸できる気がした。
夫は、ロサンゼルスに行くと具合が悪くなると言っていて、ワシントンDCもそういう合わない場所であるのかもしれなかった。
「自分の中心をしっかり持って、簡単に誰かに明け渡しちゃダメだよ」
「はーい」
やれやれな出来事だった。