太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

26歳のタクシードライバーの実話

2023-06-30 16:55:28 | 日記
高峰秀子さんのエッセイを読んでいたら、ちょっといい話があった。
1970年あたりの出来事だと思われる。
高峰秀子さんはハワイが好きで、コンドミニアムを買い、毎年のように滞在していたそうだ。

ジャンという名前の、26歳の大型ハイヤーのタクシードライバーがいた。
ジャンはポルトガル人の血が入ったハワイアンだ。
あるとき、アメリカ本土のお客から5日間の契約が入った。現れてみると、共に70歳を超えた老夫婦で、夫人は杖をついているが車の乗り降りには介助が必要だった。
1日目の観光が終わり、ホテルまで送り届けると、老紳士が25セント硬貨をジャンの手のひらに乗せて、ホテルに消えていった。
次の日も、また次の日も、25セント硬貨を渡して、「じゃ。また明日」と言って別れる。
25セントといえば、日本円にすれば25円。
いくら70年代とはいえ、チップにしては少なすぎると思うが、ジャンは一言も不満を言わず、誠心誠意、老夫婦の面倒を見続けた。
最後の日が終わり、空港まで送って、車から荷物を出していたジャンに老紳士が、
「ジャン、お世話になった、ありがとう。君の親切は忘れない」
と言って、滅多に見たことがない100ドル札をジャンに渡した。

それから3年あまりがたったある日、ワシントンから来たという弁護士がジャンを訪ねてきた。
用件は、ミスター アンド ミセスFからの遺産贈与の書類に、遺産受取人であるジャンのサインをもらいたい、というものだった。
ジャンは、しばらく考えて、3年前に毎日25セントのチップをくれた、あの人たちだ、と思い当たった。


この話は、当時の新聞にも掲載されたそうだ。
ジャンは今、80歳ぐらいになっているだろうか。
世知辛いことが多い昨今だけれど、人間の美しい心に触れて、心が洗われるような気持ちになった。


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