この19日、83歳で亡くなった
ダイエーの創始者中内功さんは、
神戸出身だけに、いろいろなエピソードが地元紙に載っている。
夫が時々立ち寄るお好み焼き屋さん「ひかり」は中内さんの生家近くにある。
お好みを焼くのは、なんと89歳の小林あやこさんという女性だ。
昨年7月、お店に顔を出した中内さんに、旧知の間柄の小林さんが
「お代はいい」と言ったら、
「商売はもうけなあかん」と
聞き入れてもらえなかったそうだ。
そして、後日届けられた色紙に書かれていたことばが、
〈ネアカ のびのび へこたれず〉公職は流通科学大の学園長だけにして、若い世代の育成をライフワークにしていた中内さんは、
ルート66を走破することを夢に、昨年、運転免許を取ったそうだ。
欲にまみれ、晩節を汚す元企業人、元高級官僚が多い中、自宅を含む個人資産の売却に同意した態度も好ましい。
私は阪神・淡路大震災の直後、名実ともに孤島化した地域のダイエーに、小さなひき肉のパックを置いたダイエーの姿勢を忘れない。まだ、水もガスも復旧のめどすらたっていない時にだ。家のかたずけに精一杯で、調理が必要な素材など当然売れ残る。
でも、そのひき肉のパックは私に
「普段」を思い起こさせてくれた。
結局、震災はダイエーの凋落を加速させてしまった。
〈ネアカ のびのび へこたれず〉中内さんがご自分にも向けたであろうこの言葉を、私もいただくことにする。