出版元のHPにある「ブラックボックス」のあらすじです。
サラダ工場のパートタイマー、野菜生産者、学校給食の栄養士は何を見たのか?
会社の不祥事で故郷に逃げ帰ってきた元広告塔・栄実、どん詰まりの地元農業に反旗を翻した野菜生産者・剛、玉の輿結婚にやぶれ栄養士の仕事に情熱を傾ける聖子。真夜中のサラダ工場で、最先端のハイテク農場で、閉塞感漂う給食現場で、彼らはどう戦っていくのか。
食い詰めて就職した地元のサラダ工場で、栄実は外国人従業員たちが次々に体調不良に見舞われるのを見る。やがて彼女自身も……。その頃、最先端技術を誇るはずの剛のハイテク農場でも、想定外のトラブルが頻発する。
複雑な生態系下で迷走するハイテクノロジー。食と環境の崩壊連鎖をあぶりだす、渾身の大型長編サスペンス。週刊朝日連載の単行本化。
本の出だし、サラダ工場で昼夜逆転したシフトで働く女性たちの日々を読んで、桐野夏生さんの「OUT」を思い浮かべました。低賃金で働く外国人従業員もいて、あちらは弁当工場でした。
こちら「ブラックボックス」のほうは、清潔さみずみずしさにおいしさを加えて・・・といったら聞こえはいいのですが、薬品、添加物のさじ加減を間違えれば、危険がいっぱいの現実を浮き彫りにしています。
大量で安定した品質、天候に左右されない野菜生産を可能にするために農業は工業化されていきます。
完全制御型ハイテク農場では土も太陽光もいりません。
花も咲かず、だから花粉を運ぶミツバチなどの虫媒も不用で、結実する果物の研究も進んでいるのだとか。
先日聞いた、奇跡のリンゴの木村秋則さんの話にも出てきて、その場では頭に入ってこなかった「硝酸態窒素」のことも登場しています。
そう、この「ブラックボックス」、フィクション、ノンフィクションの違いはあるけれど、「奇跡のリンゴ」の対極でもあり、似ているところもある物語なのです。
ホッとするのは、有為の青年たちがいて、安全でおいしい野菜をづくりに取り組もうとし、またそれを応援しようとする企業があるということ。
ただ、その野菜、欲しい人全員には行き渡りそうもありません。
こわい近未来です。