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自遊空間、 ぶらぶら歩き。

日々見たこと、聞いたこと、読んだこと、考えたこと

逆さに吊された男(河出書房新社)~田口ランディさん

2018-08-16 | 

平成最後の終戦の日、平成最後の夏の高校野球、窓の外では平成最後の蝉しぐれ(ん^^)、なにかと平成最後という枕詞がつく日々です。

オウム真理教による一連の事件で、13人の死刑囚がバタバタと死刑執行されたのも、平成に起きた未曾有のテロ事件のカタを平成の内につけたかったという意思が働いた、と発言する識者もいます。

逆さに吊された男田口ランディさんが地下鉄サリン事件の実行犯との10年を超える交流をもとに書かれた私小説です。
巻末には
「この小説は、実際に起こった事件を題材にして書かれたフィクションです」
という但し書きがあって、死刑囚Yという名前も、面会や手紙のやりとりを重ねる小説家の名前も架空のものです。

ただ、モデルになった死刑囚は林(改姓して小池)泰男であり、文通や面会を続けていたのは田口さんご本人です。

 

この本を読んだ3月、東京拘置所に13人全員収監されていたうち、林を含め7人が地方の拘置所に移送され、7月6日に7人、7月26日に6人が処刑されました。

死刑の是非は、私はないほうがいいという考えに傾いてはいますが、実際に身内が巻き込まれたらその限りではないでしょう。

実際、一人娘を地下鉄サリン事件で林泰男の乗った車両で亡くした高齢の母親は、
「自分で仙台には行かれない。この手でなくて無念だけれど、自由に空を飛べる〇子と(11年前に亡くなった)主人が、執行のボタンを押してくれた」
本来だったら、こんな物騒なことは言わないだろう女性に、ここまで言わせてしまうほど、彼らは残忍なことをしてしまったわけです。

田口さんは仙台拘置支所で7月13日に林と最後の面会をしています。
6日の7人の死刑執行を知って、覚悟はしていたようで、家族、友人、弁護士さんに宛てた遺書を送った話が出たそうです。

遺書やその後の手紙も田口さんのもとに届いたそうですが、最後の手紙の返事を書き終わらないうちに死刑は執行されました。

13人の死刑囚の内、実に10人もが再審請求中だったそうです。
権利を握りつぶしたのは誰なんでしょう。

田口ランディさんは2000年に、「コンセント」を発表しています。
ちょうどその頃、あの、例の^^お粗末な森喜朗元首相がIT(アイティー)革命をイット革命とのたまって、無料のパソコン教室が頻繁に開かれていた時代です。

私もそのころPCにさわりはじめました。
その後少しも進歩しないけど・・・。

田口ランディさんはHPなどで、エッセイなどを発信していて、よくアクセスしていました。

「逆さに吊された男」はテーマの重さのわりには読みやすい作品になっています。

 

 

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