さて、小川洋子さんの『ミーナの行進』ですが、2005年に読売新聞の土曜日の紙面に連載された新聞小説で、単行本は2006年に発行されています。
私は今回のイベントのために、図書館で借りましたが多くの人に読み込まれて、本の角が丸くなって^^いました。潔癖症の人だったら、触れない^^かもしれません。
父親を亡くし母1人娘1人で岡山に住んでいた朋子は、1972年から73年にかけて、母親が洋裁の技術を高めるため東京の専門学校に1年間、寮暮らしをしながら通うことになって、母の姉の家族に預けられます。
芦屋に住む伯母の家庭は裕福で、朋子より1歳年下のいとこの美奈子、愛称ミーナがいました。
伯母の夫の母親はドイツ人、ミーナには4分の1ドイツ人の血が混じっています。
ミーナには年の離れた兄がいて、スイスの学校に留学したばかり。
朋子はその兄の部屋を使うことになりました。
身体の弱いミーナは許可を得てコビトカバのポチ子に乗って小学校に通っています。
小川さんはこのシチュエーションを思いついてから、スイスイと筆が進んだそうです。
んな~、あり得な~いといった設定は小川さんの作品にしばしば出現します。
また重要な小道具に、マッチが登場します。
時代はバブル期の前夜、この頃は喫茶店、レストラン、バー、レジにはどこも、ラベルに工夫したマッチが置いてあったものです。
そして、いとこ同士の2人がはまった男子バレーボール、金メダルを取ったミュンヘンオリンピック。
選手村でイスラエルのアスリートが殺された前代未聞の事件。
私はその事件を中途採用のための試験に向かうタクシーの中で聞きました。
かなりの数の質問が並んだペーパーテストの一問に、今一番関心のある出来事は?という項目がありました。
私はもちろん、そのことを書きました。
朝日新聞の日曜版には大手から中小まで、求人広告が山のように載っていた時代です。
高卒の転職女子でも、引く手あまたでした。
主人公の思い出に残る1972年は、私にとっても貴重な経験をした1972年になりました。
桜の写真は作品の中に出てくる芦屋川の開森橋周辺。2017年の撮影です。