原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

プラトンのアカデメイア

2008年05月01日 | 旅行・グルメ
 本ブログで旅行記を綴るのは今回が初めてであるが、実は私は旅行好きでもある。独身時代から現在に至るまで、国内外を問わず結構あちこち旅している。

 近年は必然的に家族旅行となるのだが、夏休み等の長期休暇中には必ずと言っていいほど家族で旅行に出かけている。 残念な事に現在身内が体調不良のため昨夏以降旅行がお預け状態であるが、5月の連休中でもあるのでせめてブログ紙面で旅行記を綴ることにより過去の旅を振り返ってみることにしよう。


 昨夏、子どもの学校の夏休みに合わせて家族でエジプト、ギリシャ、エーゲ海方面へ旅行した。
 この旅行の第一目的は、古代ギリシャのアテナイ(現在のギリシャの首都アテネ)にプラトンが創設したアカデメイアを訪れることにあった。
 と言うのも、我が家の子どもの名前はギリシャ哲学者プラトンの学説から引用しているためだ。その名前の由来のギリシャ哲学発祥の地であるアテナイ(アテネ)を訪れ、紀元前4世紀にプラトンが開いたアカデメイアを、中学生になった子どもに一目見せたいがためにこの地へ旅立ったのである。

 そこで今回の記事では、この旅行の第一目的であったアテナイのアカデメイア訪問について綴ってみよう。


 前半のエジプトでの観光を終えてギリシャに到着した頃には、地中海地方は記録的猛暑で、ギリシャにおいても山火事や多数の死者が出る程の厳しい暑さであった。
 エジプトからそうであるが、その酷暑に加えて食べ物がまったく口に合わない。食事の度に辛い思いをしていたのだが、私と子どもはついに腹痛と下痢を発症した。それでも、せっかく第一目的のアテネに到着したので、相当無理をしてアクロポリスの丘のパルテノン神殿や国立考古学博物館、近代オリンピックスタジアムなどを観光した。
 この後が大変だ。ホテルに到着した後、無理がたたってついに子どもが発熱して寝込んでしまったのだ。明日はエーゲ海1日クルーズの予定だが、この病状ではどう考えても決行は無理だ。やむを得ず、エーゲ海クルーズは権利放棄することにして予約をキャンセルした。
 それにしても、第一目的のアカデメイアだけは訪れたい。アテネでの滞在は明後日の午前中まで。その後はまた空路エジプトに戻らなければいけない。何とか、明後日までの子どもの回復を望んだ。
 幸い、明後日には子どもの下痢は治まり熱も下がった。ただ、まだ食べ物が口を通らず、やつれて青白い顔をしている。それでも子どもはアカデメイアを見たいと言ってくれる。
 私達のアテネでの宿泊先は国鉄と地下鉄ラリッサ駅の目の前のホテルだった。地下鉄ラリッサ駅から三つ目のパネピスティミウ駅のすぐ近くにアカデメイアはあるので、地下鉄で移動することにした。
 この地下鉄が快適だ。そもそもアテネは人口密度がほどほどのようで、人混みというのがない。地下鉄も東京の地下鉄のような喧騒感がまったくなく、きれいに整備されている。 私達が乗り場を迷っているとギリシャ美人が声をかけてくれる。だが残念ながらギリシャ語のため言葉は理解できない。英語的発音で駅名を伝えると、何とか通じたようで案内図で指示してくれた。なかなか親切だ。きっとオリンピックを経験して市民も外国人に慣れているのであろう。
 そして、いよいよパネピスティミウ駅に到着。アカデミア口から地上に出ると、目の前にアカデメイアはあった。右にソクラテス、左にプラトンの像があり、その奥にアカデメイアはそびえ建っていた。(上の写真を参照下さい。)屋根の中央にはギリシャの旗がたなびいて、両側には男女の彫刻像がそびえ、中央には沢山の人物の彫刻がある。天井には壁画(天井画?)が描かれていた。
 このアカデメイアに限らず、アテネの街はパルテノン神殿をはじめあちこちに神殿や彫刻が多く、古代と現代が融合したすばらしい都だと感嘆させられた。
 しかも、2004年のオリンピックに際して街が相当整備されたのではなかろうか。とにかく街並みが美しいのだ。人も多過ぎないし、至る所に古代の香りもするこういう街で暮らしてみたいものである。
 アカデメイアの隣にはアテネ大学の本部があり、その隣には国立図書館があった。おそらく、古き昔はここら一帯がすべてプラトンが創設したアカデメイアだったのであろう。中に入ることは出来ないため記念撮影だけして、プラトンが紀元前にこの場で幾何学と天文学を重視しつつ授業を行った古代に思いを馳せつつ、私達はまた地下鉄でホテルまで戻った。

 下痢と発熱のためホテルで寝込んでしまった子どもにとっては、過酷で辛いアテネ訪問であったと慮る。子どもがそんな状況であることを承知の上、アカデメイア訪問を強行するとは何とも惨い親であったと反省もする。


 それでも帰国後、子どもが現在習っている油絵で、静物画として地球儀の中にギリシャ、エジプトの地図を中心に丁寧に描いているところを垣間見ると、この旅行が成長途上の子どもの脳裏に何らかの大きな印象を刻んだものと、親としてはほくそ笑むのである。
Comments (4)