原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

高齢者医療、生活の質向上にこそ観点を置くべき

2013年03月25日 | 医学・医療・介護
 (写真は、現在介護付有料老人施設に入居している義母に担当医師が処方した3月分の薬の数々。 これらのすべてを義母は日々欠かすことなく飲用しながら暮らしている。)


 これ、自殺行為じゃないの?! あるいは、医師は年寄りに“劇薬・毒薬”飲ませて殺す気なのか??
 上記処方箋を一見して、私などそういう視点からの感想しか抱けない。

 まず、何故私が義母の上記写真処方箋を手元に所持しているかに関して説明しよう。
 今年に入ってから、ケアマンションに入居している義母の保証人代行(名目上の保証人は義母長男である身内なのだが、日々の管理業務は実質上私が引き受けている)となった私の手元に、ケアマンションより各種月次報告書が届けられるのだ。

 その主たる書類が担当医による診察報告書であり、上記の調剤薬処方箋である。
 本年2月分より我が手元に届くそれら書面に目を通しては、元医学関係者の私は現在の高齢者医療の“お粗末”な一端を見せつけられる思いで、仰天させられるばかりだ。


 ここで少しその書面の内容を紹介しよう。

 まずは医師による義母の「主傷病名」を列挙すると、「高血圧、腰部脊柱管狭窄症、骨粗鬆症、鬱症状、不安神経症、過敏性大腸炎、胆石症(2cm)、緑内障、尿潜血」
 上記に羅列されている「主傷病名」の中で、私が一番気になるのは最後の「尿潜血」である。 その原因が何なのか、またその程度が如何程かに関する情報こそ知りたいのだがそれは書面上では一切不明。 義母本人からもこれに関しての現況等を見聞したことがない。
 次に気になるのは「緑内障」だが、これに関しては眼科専門医に継続受診している様子であるため、おそらく経過観察されていることであろう。
 「胆石」に関しては15年程以前より義母から見聞している。 たまたま健診により発見され、本人自身がよほど気に掛かる様子で手術を視野に入れあちこちの病院を回ったものの、何処の病院の医師の診断もそのまま放置して差し支えないとの事であった。(私自身も医師達の“放置”指示に同意している。)
 「高血圧」に関しては、義母が数十年来に渡り血圧降下薬を飲用させられ続けているため、義母の本来の血圧の程が捉えられない状態だ。
 その他の疾患名に関して私論を述べるならば、そのすべてが「疾患」と表現するよりも「老化現象」範囲内の位置付けと解釈するべき症状ではなかろうか。
 少し懸念を抱かされるのは、「鬱症状、不安神経症、過敏性大腸炎」など、投薬による副作用こそがもたらしている義母の心身を蝕む症状に、更に医療現場が無責任に投薬を重ねている現状と捉えられる点である。

 次に上記写真の「調剤薬処方箋」に移ろう。
 写真上段より、「血圧降下剤」 「ビタミンD] 「総合消化酵素製剤」 「胃・十二指腸潰瘍薬」 「末梢血管拡張剤」 「整腸剤」 「睡眠薬」 「(別種)睡眠薬」 「神経活性剤」 「(別種)神経活性化剤」 「体力回復漢方薬」 

 いやはや、としか言いようがない……

 すべての薬剤を上記「主傷病名」に連動して医師が処方した事は明白だが、もしも担当医先生に医療従事者としての意思やプライドのかけらがあるのならば、相手が死を間近に控えている老人とは言えども“人の尊厳”感覚が抱けないものなのか??   そんな“綺麗事”よりもこの経済難の時代に際しては、患者を薬漬け、検査漬けにする手法に頼り自らの医院を続行することが先決問題なのか?!

 もちろん、我が家でも話し合った。 
 「こんな“毒薬”を日々盛られていたのでは、よほどの生命力でもない限りお婆ちゃん(義母)は薬の副作用で苦しめられ続け、余命は実質短いよ。」  この私の問いかけに対し身内が応えて曰く、「母には元々医学的知識がないし、母が自分で希望して医師に受診し母なりの解釈をして生きているのだから、今更我々が意見できる立場ではない」
 そう言われてみればその通りであろう。 私が義母と出会ってわずか20年足らず。晩婚である我々は義母が年老いて後に婚姻に至っている。  今回保証人代行を任されたからと言って、そんな義母が自分の人生で培って来た価値観を、今更弱輩者の私の力で変えられるはずもない…  義母の心身が蝕まれる事は承知の上で、ここは担当医を信頼している義母の“薬漬け”余生を肯定するしか方策がないのであろう……


 それにしても元医学関係者である原左都子は、今回のエッセイにおいてどうしても訴えたい事がある。

 先だってNHKニュースを見聞していたところ、ここにきてやっと高齢者医療において、延命措置よりも表題に掲げた“高齢者の生活の質の向上”を主眼とするべくことが叫ばれる時代となったとの報道だ。
 時既に遅しではあるが、少しずつでもその方向に向けて医療が変遷して欲しいものだ。

 「原左都子エッセイ集」に於いて既に散々訴えてきているが、現在の医療とは行政と製薬会社及び医師会との癒着により成り立っていると表現しても過言ではない。
 人の命とはそれらの癒着よりもずっとずっと重い存在であることに、国民皆がもっと早く気付くべきだった。

 まだ遅くはない。
 今後は国民の健康教育から開始しよう。 病気になったら即医療機関や薬剤に頼るという発想ではなく、まずは自分自身で自分の健康を守り抜く知識と意識の教育こそが大事である。 これを「予防医学」と言う。

 既に「予防医学」は我が国でも発展・定着しつつある。
 安倍政権がこれに目覚め、医療業界を取り巻く「癒着」と今こそ完全に決別することを望みたいものだ。