原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

薬を何処で買おうが自らの命は主体的に守り抜こう

2013年11月09日 | 医学・医療・介護
 冒頭から、我が義母が現在服用中の調剤薬の数々とその効用及び副作用に関して、その一部を以下に列挙して紹介しよう。 
 (参考のため現在義母は高齢者有料ケア施設に入居中であるが、その保証人代行を任されているため、施設内で定期的に実施される医療措置に関する詳細のデータが我が手元に月次報告の形で送付されてくるのだ。)

 ① 血圧降下剤 … 血管を拡げ血圧を下げる。 めまいやふらつきが起こる事がある。
 
 ② 骨粗鬆症対策剤(ビタミンD) … カルシウムの吸収を助け骨がもろくなるのを防ぐ。 

 ③ 総合消化酵素製剤 … 消化不良や食欲不振などを改善する。

 ④ 胃・十二指腸潰瘍及び胃炎剤(2種) … 胃酸やペプシンの分泌を抑えることにより潰瘍や炎症症状を改善する。 皮下出血、全身倦怠感、脱力、発熱等の症状が現れた場合使用を中止するように。

 ⑤ 末梢血管拡張剤 … 潰瘍や冷えを改善したり神経障害による足の痛みやしびれを改善する。 

 ⑥ 睡眠薬(2種) … 脳に作用して不安や緊張を和らげ寝つきを良くして眠りを持続させる。 薬の影響が翌朝まで及び、ねむけ、ふらつき、注意力の低下が起こることがある。

 ⑦ 鬱薬(2種) … 脳にはたらき神経を活発にすることにより憂鬱な気分やふさいだ気分を改善し、意欲を高める。 動悸、息切れ、めまい、意識喪失等の症状が起こった場合、直ぐに連絡せよ。

 ⑧ 沈炎症貼り薬 … 炎症により起こる腫れを取り、痛みを和らげる作用がある。アスピリン喘息がある場合使用不可。

 ⑨ 緑内障用眼圧低下剤 … 交感神経β受容体遮断により眼圧を下げ、緑内障を治療する。 気管支喘息、心不全、徐脈の症状がある場合使用不可。


 義理姉が膵臓癌により入院闘病を余儀なくされた(その後7ヵ月後に死去)時点で、義母の保証人を我々夫婦が義理姉から受け継ぐ形となった。
 早速ケア施設より届いた義母の上記「投薬」報告を一見して、元医学関係者の私は唖然とした! 
 「何これ! 主治医は本気で体が弱った義母相手にこの劇薬の数々を日々盛ってるの?? それって副作用の数々を併発させとっとと死ねと言ってるも同然だよね。 あなた達実の姉弟は今までその事実を認めてきたという事? 今すぐ、こんな理不尽な投薬医療をケア施設に訴えて無謀な投薬をやめてもらおうよ。」
 それに対する身内の判断に、悲しいかな私も従わざるを得ない実態だった。
 身内曰く、「母には医学的知識が皆無故に、昔から体調が悪いと医療に頼る日々だ。 そんな母にとって医師の指示こそが我が身を救ってくれると信じられる事に間違いない。 今更我々が医学的知識を母に教育しようったって、それは既に老いぼれている母には負担が大き過ぎる。 ここは担当医を信じ医療に頼る母の意思を尊重して、母の希望通りの投薬を叶えてやった方が母自身が安心でき、余生を楽しめると思う。」…

 確かに我が身内が言う通りであろう。 80余年の人生を主治医の判断に頼り、それを信頼して生きてきた義母の医学的価値観を今さら変える力など他人の私には到底ない。
 加えてホメオスタシスの観点も無視できない。(ホメオスタシスを簡単に説明すると、生命体とは環境等の要因に適合しつつその生命を保っているとの理論だが)
 申し訳ないが、副作用で苦しむのは承知の上で義母にはこのまま“薬漬け”の人生を全うさせてあげるしか方策が取れないとの結論であろう。
 (参考のため、我が郷里で一人暮らしの実母とて医学的知識がまったくなく、主治医の指示に頼り多くの調剤薬に頼る日々である…。)


 ここで話題を変えよう。
 一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を巡る争いが、再び法廷の場に持ち込まれそうだ。
 先だっての11月6日に開かれた緊急記者会見で、楽天の三木谷浩史会長兼社長やケンコーコムの後藤玄利社長は、大衆薬のインターネット販売を一部制限する政府方針に反対し、ケンコーコムを中心に行政訴訟を起こす構えを見せた。
 最高裁判所は13年1月、ケンコーコムなどが厚生労働省を相手に起こしていた訴訟に対し、国の上告を棄却する判決を言い渡した。これで医薬品のネット販売を巡る争いは終結したと思いきや、政府は医療用から切り替わったばかりの市販薬23品目と劇薬指定の5品目はネット販売を認めないという新たなルールを設定。 ネット通販業者側がこれに猛反発したとのいきさつだ。
 その一方で、当然ながら薬害防止の観点から「何が何でも規制緩和」という方針に異を唱える人もいる。  医薬品のネット販売を巡る争いは、新たな段階に入りはじめたようだ。  (以上、ネット情報より一部を要約して引用。)


 元医学関係者である原左都子の立場から、最後に私論を述べよう。
 
 特定薬剤に依存し続けねば命が持たない類の、切羽詰った難病に罹患している人々の存在も当然ながら承知している。 厳しく辛い副作用を承知の上で、命を張ってでもその苦痛に耐えつつこの世に生命を繋ぐため薬剤を使用している患者さん達にとっては、その薬剤こそが命の源である事には間違いない。

 今回の一般大衆薬インターネット販売騒動とは、まさかそこまでの重篤な患者さん達が日々依存している薬剤をもターゲットとしていない事と信じたいが如何であろうか?
 要するにあくまでも安全が保証されている「一般薬」の販売のみをインターネット業界が欲しているとするならば、原左都子としては許容範囲と結論付けられる。

 ただし、困難な問題もあることも予想可能だ。
 自分自身では「薬で治る」と信じてネット販売に頼ったのに、実はその病気が難病であったような場合である。
 そこで私論だが、ネット販売に於いてもネット顧客が欲するままにいつまでも継続して無責任に当該薬を販売し続けるのではなく、一定の販売期間の限度を設定しては如何か?
 もしも顧客の薬購入期間が長過ぎるような場合、一旦ネット販売を打ち切り病院医院を強制的に受診させるべくシステムを導入するとの方策もあろう。

 ネット販売で購入した薬剤で早期に治癒するような症状とは元々“一過性”であり、その薬に依存せずして治癒する大した病気(怪我)ではないと私は心得る。 その種の薬剤に関しては(気休め範疇の意味合いで)ネット販売に頼っても事足りよう。

 片や、大した病気でもないのに患者側の無知さ故の勝手な思い込みで、医療機関受診に全面依存する事の弊害こそが今まで大きかったのかとも考察する。
 過去に於ける政権と医師会及び大手製薬業界との癒着に翻弄され、多くの人々が不要な薬を大量に処方され続けた挙句の果てに副作用死させられて来た事態が、今後薬ネット販売により回避可能な場合もあるかと結論付けたい。