原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

「ナッツ・リターン」騒動、むしろ大韓航空の名が売れたのでは?

2014年12月23日 | 時事論評
 このニュースを最初にテレビ映像で見た時、その内容を十分に把握していない段階から私の脳裏にある種の“印象深さ”が刻み込まれた。

 まず、事件のネーミングが凄い! 
 「ナッツ・リターン」  まるで映画のタイトルだ。

 そしてテレビ映像に映し出されたのが、長身モデル体型韓国女性がコートにマフラー姿で公衆の面前で深々と頭を下げる(謝罪会見する)姿だった。
 新作映画公開挨拶のために主演女優氏が公道で会見を執り行ったのかと見間違う程に、その映像は一つの“完成したシーン”として、少なくとも私にとって訴えてくるものがあった。


 さてここで「ナッツ・リターン」騒動に関し、朝日新聞12月19日付記事よりその内容を要約して以下に紹介しよう。
 米ニューヨーク発、韓国仁川行きの大韓航空便は12月5日出発準備を終えて滑走路に向かっていた。
 その時“事件”は起きた。 ファーストクラスに乗っていた大韓航空前副社長の趙氏(上記の長身女性だが)が、客室乗務員女性が差し出した「ナッツ」に疑義を提示した。 社内マニュアルでは袋からナッツを取り出し皿に盛って提出する事になっていた故だ。  趙氏はすぐさま機内サービス責任者を呼んで確認を求めたがそれに応じられたかったため、許しを求める客室乗務員と責任者をひざまずかせて罵声を浴びせたという。  その後、趙氏の指示で旅客機は搭乗口に引き返し事務長を降して、再度滑走路に向かい飛び立った。
 この事件に対し韓国国内から、「財閥令嬢による行き過ぎた行為」との世論が高まっているとの事だ。 令嬢の父親である財閥会長氏もこれら国内世論に対し、「私が娘の教育を間違えた」と謝罪した。
 現在韓国国内では「ナッツ・リターン」騒動を受けて、財閥の世襲経営を問い直すべきだとの主張が相次いでいる。 特に批判の対象になっているのは「財閥3世」達らしい。 朝鮮日報等々によれば、「幼い頃から苦労した事がなく問題を起こすことが増えている」 「財閥3世は道徳性や経営能力面で十分な検証を得ていない場合が多い」 などと伝えられている。  韓国の財閥経営は2世から3世に移る過渡期にあり、「3世の不合理な命令に逆らえない財閥の垂直的企業文化が根付いている事も問題」の指摘もある。
 (以上、朝日新聞「ナッツ・リターン」に関する記事より要約引用したもの。)

 一旦、原左都子の私論に入ろう。

 なるほどねえ。 韓国にも財閥が存在して、その財閥3世が総じて先代から十分な指導教育を受けられないままに裕福な子供時代を送り現役世代となり、挙句の果てに問題行動を起こしている現実……
 我が国にも同じ時代があった(今もか??)と振り返るが、現在の日本に於いて財閥3世(あるいは4世、5世)の能力・実力の程は如何なるレベルなのだろう??  
(今となっては世の底辺を彷徨っている私にとって、その辺の日本国内考察が抜け落ちていた事を今更ながら今回の大韓航空事件で気付かされた次第だ。)


 それにしても、(韓国世論によれば)今回大韓航空が世に恥を晒したとの「ナッツ・リターン」騒動は、国内外旅行で旅客機を頻繁に利用している原左都子にとっては、別の意味合いで興味深いのだ。

 と言うのも、私も航空機内の客室乗務員のサービスに関しては“うるさい”方だ。 (いえいえ決してその場で文句は垂れないものの、後々根に持つタイプである。)
 今回の大韓航空「ナッツ・リターン」の場合も、社内規定に「ファーストクラスではナッツを皿に盛って出す」なる規定が存在していたのならば、従業員はその規定に従うべきなのは当然であろう、と私も前副社長氏に同感する。  かと言えども、離陸直前の航空機を引き戻させる程の強引な措置を取らずとて済んだのかもしれないが、前副社長との身分だったからこそそれが可能だったとも結論付けられよう。


 ここで、我が航空機内で直面した“許し難き”私事を以下に述べよう。

 
 離着陸時には安全確保の目的で「トイレに行くな!」と指示する航空機会社は数多い。 ところが、これが長時間に達する事がよくある。  小さな子供を引き連れた空旅など、どうしてもそんな場面でトイレを利用せねばならない場面は否めない。 
 そんな場に於いて某国内航空会社(JALだが)などは、事前に小さな子供を引き連れている乗客に必ず「今のうちに子供さんをトイレに連れて行って下さいね」と客席まで指示しに来てくれることが幸いする。  ところがこれを一切実行せず、着陸体勢時に子どもをトイレに連れて行ったことをこっ酷く客室乗務員氏から叱られた事がある。
 (それを十分に反省している立場にして、着陸までの時間が天候等の事情により長引く場合、大人とてトイレに行けない事が耐えられない場合もあるのだ。 それ故、世界中の航空機企業にはもう少しトイレタイムを自由化する方向で何とか善処してもらえないものだろうか!?!)

 あるいはくだらない話で恐縮だが、国内線に於いて一昔前には“子供にお土産を配る”のが常識だった時代がある。
 我が娘が幼少の頃、飛行機に搭乗する都度これを幼心に楽しみにしていた。 ところがある時(おそらく機内が混雑していた故と推し量るが)、周囲の子供達に乗務員よりお土産が配られる中、我が子のみ無視されたのだ…   これは母としても辛かった。 それでもまさか、無料サービスでしかないお土産をねだるために乗務員ボタンなど押せるはずもない…  今にも泣き出しそうにしている我が子に何と説明しようかと考え抜いた挙句、私は娘にこう伝えた。 「今日は飛行機内が混雑しているからお土産が足りなかったのよ。 そこでスチュワーデスさんが“お利口さんの子供はきっと我慢できる”と思って貴女には配らなかったのよ!」  少し不満げだった娘も私の説明に納得して、その後幾度国内線に乗ろうがお土産をねだることはなかったものだ。 (それでも尚お土産をもらえた時には、今まで以上に娘が嬉しそうだったのが印象的だ…。) 


 上記大韓航空の「ナッツ・リターン」騒動に話を戻そう。

 この事件、むしろ前副社長氏である3世女性趙氏は、あえて航空機内の規定に関し厳しく対応したとも理解可能だ。 何のための「航空機内規定」であるかを再考した場合、それは“お客様が命”だからに他ならないのではあるまいか?
 韓国国内の諸財閥が如何なる事業を展開しているかは私には図り知れないが、その末端企業として航空事業等のサービス業を展開している以上、「顧客サービス観点」をモットーとするべきだ。

 今回の趙氏の場合、自分の我が儘により実行してしまった不祥事であったかもしれないが、その行為が今後の大韓航空のサービス向上に繋がる事に私は是非とも期待したい。
 “ファーストクラスではナッツをお皿に入れて出す”と大韓航空内で規定されているのであれば、それを守り抜くのが組織末端で働く人材の使命と私も心得るのだが、如何だろうか?
 それに異論があるのならば、客室乗務員達は事前に地上にて社内上層部に改善策を提示しておくべきだったはずだ!