原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

人間の心の拠り所とは時の経過と共に移り行くもの

2015年08月11日 | 人間関係
 お盆の時期に郷里へ帰省しなくなってもう何年の年月が流れただろう。

 テレビニュースにて、故郷への帰省(及びUターン)ラッシュの話題に触れる都度、そんな感覚が我が脳裏にカムバックする。


 独身時代には、(望郷の念のかけらもない)天邪鬼気質のこの私も、盆暮れには結構“生真面目に”故郷を訪れたものだ。
 あの行動は如何なる心理に基づいていたのかと今考察すると、要するに郷里の親達が私に会いたがる思いに応えるためだったとの結論に至る。
 (こちらとしては親などとっとと捨て去って上京したつもりでも)親側にとっては自慢の娘だったようだ。 当時まだまだ若かった親達(特に母親)にとっては、都会で一応の成功を遂げしかも親の欲目では美しく成長(??)した娘の私を周囲に誇りたい様子だった。 帰省の都度我が親がいつも私を車に乗せては親戚・知人宅を訪れ、一時娘自慢を繰り返した事に、私もまんざらでもなくその気になって付き合ったものだ。

 その後、郷里を訪れたのは我が娘を産んで以降だ。
 娘誕生後8ヶ月時点より10歳頃までその習慣が続いた(と言うよりも我が意思で習慣を続けた)。 その理由とは、上記同様、郷里の親が我が娘である孫を見たいとの要望に応じて執り行った儀式である。
 ただ我が家の場合、娘が特殊な事情を持って生まれていた事が一番のネックとなり、その後すぐさま一家にての帰省を終焉させた。 
 これに関しては、私にとっては今思い出しても辛い出来事だ。 我が娘が郷里帰省時に40度を超える高熱(我が娘は幼少の頃より中学生に至るまで、度々原因不明の高熱に苛まれた)を出してしまい、数日の滞在中ずっと郷里の実家にて寝て過ごす事態と相成った。 そんな娘の病状は母親の私としては“日常茶飯事”だ。 ところが、突然の娘の発熱にパニックを起こした実母(娘にとっては祖母)が娘の私に言い放ったのは、「孫の具合が悪い時に郷里に連れて帰るな! 孫の調子がいい時に帰省して可愛い姿だけを見せろ!」
 (参考だが、決して娘の調子が悪い状態で郷里へ連れて行ったのではなく、おそらく郷里にての環境変化等が引き金となり不明熱を出したものと推測する。)

 この一言が、すべてを物語っていた。 「失言」の範疇を超えた我が母親の咄嗟の発言に、私としては「こいつは親じゃない…」なる判断を再び下さざるを得なかった。
 私はそれ以前より、我が実母はもしかしたら天然阿呆でないかと思っていたのも事実だが…  私として実母から返して欲しかったのは、「この子を授かって貴女も日々苦労しているんだね…。」たったのに、我が母の口から出た阿呆過ぎる一言を私は今後の教訓とした。 その教訓とは「この馬鹿親に今後一切娘を会わせるべきではない!」との結論だ!

 それでもどうしても自分の孫の成長を見たいという、郷里に一人暮らしの実母(実父は既に他界)の希望に沿い、現在に至って尚盆暮れの時期を避け、私は実母の孫である娘を引き連れ二人で郷里を訪れている。
 ただ必ずや実母が住む実家には絶対に宿泊せず、娘と二人でホテルを予約し、我が実家に長居せずしてホテルに舞い戻る習慣が付いている。
 その理由が未だ分からず、「何で実家に泊まらないのか??」と我々を責め続ける実母だ。 自分自身が娘と孫相手に犯した罪の深さを一生理解しようともしない愚かな実母を、私側も今後一生に渡って恨み続ける事であろう。


 話題を大幅に変えよう。

 朝日新聞8月8日付“悩みのるつぼ”の相談内容は、40代女性による「息子がスマホから離れない」だった。
 その相談内容を以下に要約して紹介する。
 50歳前の女性だが、息子は中学後半から現在在学中の高校を目指し、塾通いと先生方に恵まれたお陰で難関を突破して進学高に入学出来た。 高校入学後スマホが必須という息子に対してそれを与えたら、それに四六時中没頭する日が続く有様。 私が注意すると暴動行為に出る息子に対し、堪忍袋の緒が切れた夫が息子のスマホを折ってしまった。 息子は「学校におカネを振り込んでくれ、住む環境と食べるものがあれば自分一人で生きていける。 親はそのためのもの。」とはっきり言う。 そんな息子のために今後毎日弁当を作る気になれず、一切かかわりたくない気持ちが高まるばかり。 どうするべきなのか、相談に乗って下さい。


 私論に入ろう。

 こんな親子にこそ、盆暮れには親の郷里へ息子さんを連れて帰る事をお勧めしたい思いだ。

 もしも実際、現在高校1年生になったばかりの息子さんを持つ相談者氏のいずれかに郷里があるのならば、そこのに住む祖父母こそを活用するべきだ。
 私が推測するに、相談者両親の親御さん達は未だ痴呆が進む程の高齢域に達しておられないことであろう。 相談内容から、既に高校生になっている息子さんは(原左都子の娘とは大いに異なり)まさか生まれ持っての事情など露持っていないと推測する。 まだまだ息子氏の柔軟な思考が叶う時期にこそ、故郷が置かれている現実に触れる体験をさせるだけでも大いなる刺激を受けると想像する。

 (自分の息子は頭が良いのよ、と言いたげな)相談者氏である40代母親女性側も、たかが高1の息子氏から吐かれた暴言を真に受けて、ご亭主まで伴い親二人で結託して未だ幼い息子氏を敵に回す必要もなかろうに…。 息子氏が吐いた発言は、ある意味では正論だ。 子供が学業を終えるまでは、親の責任として学校にカネを支払い、住む環境を整え食べるものを与えるのは当然の親の義務だ。
 ここは、息抜きに(未だ素直な年代と思しき)息子氏を連れて郷里の盆祭りを楽しまれては如何であろうか?

 相談者の息子さんは進学高に入学出来、現在既に愚かな二人の親どもに抵抗できる力を培っておられるとの事。
 心配せずとも、将来は独り立ちして親元から離れる事であろうと想像する。
 その時点に於いて、親の方こそが息子氏に“捨てられた”感覚をちまちま抱くのではなく、喜んで息子氏を旅立出せて欲しいものだよ。