◎伊藤昭久さん、田村治芳さん、松岡正剛さん
伊藤昭久さんの『チリ交列伝』は、はじめ、『彷書月刊』という古書関係の雑誌に連載されていたという。その連載が、論創社の目にとまって単行本になり(二〇〇一)、さらに、ちくま文庫にもなった(二〇〇五)。
今、ちくま文庫版『チリ交列伝』を手に取ってみると、巻末に、田村治芳〈ハルヨシ〉さんの「伊藤さんについて――チリ交外伝」という文章、そして、出久根達郎さんの「解説 人は何を残すか」という文章が載っている。このうち、田村治芳さんの文章は、たぶん、論創社版のときから載っていたものと思われる。
ちなみに、田村治芳さんは、「なないろ文庫ふしぎ堂」という古書店の店主で、また『彷書月刊』の編集者でもあった(故人)。伊藤昭久さんとは同業者であり、かつ、伊藤さんに、自分の雑誌に文章を書くよう勧めた人でもある。そういう関係で、この「伊藤さんについて」という文章を草することになったのであろう。
ところで、田村さんは、その文章の中で興味深いことを述べている。伊藤昭久さんは、かつて山梨シルクセンター出版部というところに勤めていて、一九六九年に『孤立者たちの対話』という本を編集・刊行したという。同書に執筆しているのは、土方巽、唐十郎、寺山修司、横尾忠則といった錚々たる面々である。
今日、「山梨シルクセンター」といっても、誰も、その名を知らないと思うが、世界的ブランドとなった「サンリオ」の前身である。もっとも、伊藤さんは、社名が「サンリオ」に替わる前に、退社したらしい。
ちなみに、『孤立者たちの対話』の編集にあたったのは、伊藤さんひとりではなかった。田村さんによれば、当時、「MAC」という会社に在籍していた松岡正剛さんも、伊藤さんとともに、この本の編集にあたったという。
世の中、いろいろなところで、いろいろな結びつきがあるものである。