礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

加藤典洋さんの『9条入門』を拝読した

2019-06-09 02:34:55 | コラムと名言

◎加藤典洋さんの『9条入門』を拝読した

 加藤典洋さんの『9条入門』(創元社、二〇一九年四月)を拝読した。加藤さんは、本年五月一六日に亡くなられており、この本が「遺著」ということになった。
 同書の三三三ページに、「注」の形で、次のようにある。

8 本書では、ここでいったん筆をおくことにする。本書の刊行に際し、編集者の矢部宏治氏をはじめとして、「戦後再発見」双書編集部のみなさんによる、企画段階以来の一貫した助力と創造的介入がなければここにはこぎつけられなかったこと、筆者の体調不良を受けて、本文の校訂や文言の整理等について、旧知の友人で思想史家の野口良平氏による甚大な助力なしにはとうていこの本が完成を見られなかったことをここに注記し、感謝の意を表しておきたい。

 また、三二七ページには、「ひとまずのあとがき」における結びの言葉として、次のようにあった。

 最後に、体調不良のために私自身は参加が叶いませんでしたが、この本の草稿の検討会を行い、率直で、歯に衣を着せない批判と、心のこもった数々の鋭い意見を寄せてくださった友人仲間、橋爪大三郎さん、瀬尾育生さん、伊東祐吏さん、野口良平さんに、その名を記し、深い感謝の念を捧げます。

 まさに「絶筆」という感がある。「ひとまずのあとがき」の冒頭で、加藤典洋さんは、「次の本」に言及している。おそらく、心残りもあったことだと思う。
 この本では、いろいろなことが論じられているが、最も重要なのは、宮沢俊義の「思想的変節」を論じた部分ではないだろうか。しかし、十分な展開にはなっているとは言えない。おそらく加藤さんは、このあたりにも「心残り」があったのではないかと感じた。それにしても、七十一歳の死は、あまりにも早い。

*このブログの人気記事 2019・6・9

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする