◎関東大震災の時より、ずっとひどい（Ｍ・Ｗ・ヴォーン）
『日の出』１９４５年１１月号から、ＵＰ通信社極東総支配人Ｍ・Ｗ・ヴォーンに対するインタビュー記録「日本を斯く見る」を紹介している。本日は、その二回目。
「問」は、ニッポンタイムズ社編輯局総務の長谷川進一によるもの。「答」は、それに、Ｍ・Ｗ・ヴォーンが答えたもの。
問 空襲で荒廃した東京を、初めで見た時の印象はどうでした？ 予想以上でせう。
答 関東の大震災の時に比べると、ずつとひどいですね。久し振りに東京へ帰つて来て、旧友達と会へるのはうれしいが、昔住んでゐた東京がこんなにひどくやられてゐるのを見るのは全く愉快ぢやありませんね。
問 貴方は太平洋を渡つて東京へ来たんだから、方々の戦場で空爆被害を見て来た訳ですね。他の戦場と比べて東京はどうですか？
答 マニラは、私は行かなかつたが、友人の話によると、あそこは東京、横浜よりひどいさうですわ。あの辺ではマニラが戦前の状況に復するには、今後十年から二十五年はかゝると計算してゐますよ。私が見た範囲では、ラングーンが相当ひどかつたが、東京はラングーン以上ですね。こんなにひどくやられてゐる所は他に見られませんでしたよ。
問 欧州から来た記者は、ベルリンよりも東京のほうがひどいと言つてゐました。原子爆弾のお蔭で広島はもつとひどいんですが。――
時にニユーヨークから東京まで、新戦場としてはどんな所を通つて来ましたか？
答 真珠湾にしばらくゐました。それから（あの日本で撃沈したと伝へた）航空母艦サラトガなんかに乗つて方々へ行きました。その次にサイパンへ行きました。サイパンからフイリピンへ行つて、レイテ島やミンダナオ島作戦の従軍記を送りました。その後はニユーギニアとあの附近の島嶼へ廻り、豪州、 セイロン島を経て印度へ行つて来ました。ビルマ作戦に一部も報道の任に当りました。
問 戦場で見た日本兵を、勇敢であると思ひましたか？
答 戦争の最初の九ケ月の間は、日本軍は実によく戦ひました。それから以後は米軍の優秀な装備と作戦とのために、日本は大抵の戦闘に敗れました。
問 全般的に見て、日本の敗戦の原因は何処にあると思ひますか？
答 私の印象では、日本が敗戦したのは指揮の不統一と作戦計画が悪かつたためと思ひます。日本の陸軍と海軍の協力があまりうまくいつてゐないのを、我々は知ることが出来た。日本の装備は、一般的にいってアメリカ程よくなかつた。一言にして言へば、日本の敗戦の原因は、動員した兵の数にしても、航空機にしても、艦船にしても、銃火器にしても、その他の点に於ても、米国の方が優秀であつたといふことに帰着します。【以下、次回】
