◎人類の多数は生命を愛せざる者なり(内村鑑三)
山本七平編『内村鑑三文明評論集(一)』(講談社学術文庫、1977)から、内村鑑三の文章を紹介している。本日は、その三回目。
本日も、比較的、短い文章を三つ紹介したい。いずれも、1903年に発表された文章である。
戦争の意義
人は利のために戦う。しかれども神は罰せんがために戦わしむ。国民は戦場に臨んで神の刑場に臨むなり。彼らは自国の罪を贖【あがな】わんがために屠【ほふ】らるるなり。同類相対して流血淋漓【りんり】たるところはこれ貴族の淫縦【いんしょう】と平民の偽善とが万邦注視の前において公義の判決に服するところなり。
戦争の止む時
戦争を止【とど】むるに二途あり、進んで敵意を霽【はら】すにあり。退いて自己を正すにあり。しこうして神は常に第二途を択【えら】び給う。しかれども人は常に罪を他人に帰して自身は義名を帯びて死せんと欲す。これ戦争ある所以【ゆえん】なり。名誉心なり、傲慢心の遂行なり。流血をあらしむる者はこれなり。人類が自己を省みるに敏〈ビン〉にして他を責むるに鈍【にぶ】くなる時に至りて戦争は全く廃止せらるるに至るなり。
戦争を好む理由
生命を惜しまざるをもって勇気なりと称す。しかも人類の多数は生命を愛せざる者なり。人世に絶望して常に死を思う。ゆえに他人を殺してみずからも死せんと欲す。これこの世にありて戦争が常に多数の賛同を博する所以なり。もし生命の真価にして知られんか、人類は直ちに戦争を廃するに至るべし。絶望家の世に多数を占むる間は開戦の声は常に高かるべし。