礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

シナリオ「歌舞伎王国」(1950)の時代設定は現代

2023-06-18 02:55:14 | コラムと名言

◎シナリオ「歌舞伎王国」(1950)の時代設定は現代

 今月7日・8日のブログで、坂本徳松著『前進座』(黄土社、1953)という本を紹介・引用した。8日に引用した箇所には、敗戦後、前進座が『歌舞伎王国』という映画を企画したが、完成にいたらなかったこと、シナリオ「歌舞伎王国」は出来あがっていて、雑誌「テアトロ」昭和二十五年九月号に掲載されていることが記されていた。
 先日、国立国会図書館に赴いたついでに、『テアトロ』第111号(1950年9月)を閲覧し、シナリオの部分をコピーしてきた。『綜合演劇雑誌 テアトロ』は、河童書房刊で、同号の定価は70円。
 巻末に、「歌舞伎王国/前進座映画シナリオ/村山知義」が掲載されている。冒頭に、場所・時・人物の紹介がある。本日は、これを紹介してみよう。

場所    東 京
時     現 在
人物
 松島 額之助  六十三才の老歌舞伎俳優。名題ではあるが、下級の地位。
 同  門 八  二十八才、その子。同じ一座の下級俳優。
 同  お 近  四十九才、額之助の妻。門八の母。
 山下金右ヱ門  六十才。座頭。
    お 篠  五十三才。その妻。
    吉 弥  二十六才。金右ヱ門とお篠の間の子。立女形。
    お 絹  三十八才。金右ヱ門の妾。
    鈴 代  十八才。金右ヱ門とお絹の間の子。
 西川 雁 雀  四十六才。老女形。
    初太郎  二十五才。吉弥の弟子。
 花村      五十才。頭取。
 鈴本      四十九才。金右ヱ門の番頭。
 吉川      帝都劇場の支配人。三十才。
 松本      帝都劇場管理室係。二十七才。
    お 澄  売店の売子。四十三才。
    繁 蔵  大道具の頭。
    音 蔵  下足番。五十才。
    丑 蔵  年寄の大道具師。
    又 三  一道具師。二十五才。
 下瀬      会社の重役。五十五才。
 網倉 せん子  四十二才。吉弥のパトロン。
 神本 たず子  三十一才。吉弥のパトロン。
 荒井 留 吉  六十才。揚幕の爺。
    お 杉  五十才。お絹の家の女中。
    く に  二十五才。金右ヱ門の家の女中。
 床山・衣裳屋・金右ヱ門の男衆・金右ヱ門の弟子。
 西川 あやめ  二十八才。
 中村 扇十郎  五十八才。
 山下 冠寿郎  三十五才。
    吉太郎  大部屋の女形。
    粂 也  同右。
 劇場の女案内人・喫茶ガール・銀座の与太者・キヤバレーの女給二人・織本
 劇場の観客、あんま、キヤバレーの客たち、渋谷のパン助お吉、掃除人、芸者三人

「時」=現在、とあるように、このシナリオは、1950年(昭和25)現在の歌舞伎界を描いている。
 上記の「人物」に入っていないが、シーン〔5〕には、演劇批評家の東周一が登場する。明日は、そのシーン〔5〕を紹介してみたい。

*このブログの人気記事 2023・6・18(9位の柳宗玄、10位の土肥原賢二は、ともに久しぶり)

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