たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『エリザベート』七度目の観劇(2)

2015年08月29日 15時23分39秒 | ミュージカル・舞台・映画
キャストが発表されてこのチラシを手にした時には待ちどおしくてなりませんでしたが、気がついたら三カ月の公演はあっという間に終わっていました。

『エリザベート』の終わりと共に本当に夏が終わったかのように急に涼しくなりました。
また暑さがぶり返すときついですね。妹・父とお別れとなった9月の半ばはどちらもすごく蒸し暑い日でした。このまま涼しくなってはいかない気がしますがどうでしょう。

8月20日(水)夜の部観劇からまた少し思いつくままに書いてみたいと思います。

トートダンサーのお一人の岡崎さんのブログを読んでいたら本当にハードであったことがよくわかりました。でもそんなことを舞台では感じさせず、よりクオリティ高く舞台の世界観を創り上げていました。
トートダンサーの皆さんが創り上げていた世界は、ひとつの芸術として成立していたと思います。シシィをトートの下へと踊りながら連れ去っていく場面、ルドルフを追い詰めていく場面、ハンガリー訪問でトートの「闇が広がる」の後マントを翻してトートに従い吹雪の音と共に去っていく場面、コルフ島の場面、ゾフィー旅立ちの場面・・・。オペラグラスを使っているとなかなか全体を観ることができませんでしたが、素晴らしかったです。映像にならないのが残念ですが、目に焼き付けました。
衣装どうやって着るんだろう。何気に毎回気になりました。


トートダンサー、宝塚では黒天使とした登場し、トートに従うと同時に黒子の役割も果たしつつ舞台をひっぱりました。初演の、ダンスの名手五峰さん率いる黒天使たちのダンスを今も忘れられません。


結婚式の翌朝シシィが皇太后ゾフィーに「なんて寝坊なの」と最初に叱られる場面。
ゾフィーに従って女官たちが現れ、ゾフィーのシシィに向けられる厳しい言葉の一つ一つにうなづきながら「皇后の務めは自分を殺して全て王家にしたがうこと♪」と歌う時の振付の雰囲気に、シシィを精神的に追い詰めていく感じがよく現れていました。
アンサンブルの皆さんのダンスが見事にそろっていて、毎回毎回怖いぐらいの気迫を感じました。こんな所にまだ十代のシシィが一人でほうり出されたら恐怖ですらあったであろう空気感をより高めていたと思います。素晴らしかったです。


シシィが精神病院を訪問する場面で、自分をエリザベートと思いこんで「ひざまづきなさい」と命令するヴィデンシュ嬢。今回は傘も何も持たずシシィに向かって投げつけるスカーフと簡素な花の冠?だけでした。演じる真瀬さんの狂気ぶりとシシィとのスカーフをはさんでのシシィとのやりとりが毎回少しずつ違いました。狂気ぶりが進化していき、コルセットで体をがんじがらめに縛りあげなければならないシシィに孤独感を知らしめる存在となりました。
最後は落ち着き解放されるような表情でルキーニに守られながら病院の中に戻るヴィデンシュ嬢と「自分の手に入れたものはなに?孤独だけよ♪」と打ちひしがれながら歌うシシィ。二人のエリザベートの対比も毎回見応えがありました。
ヴィデンシュ嬢の演技がよくないとシシィの孤独がより伝わってこないので、真瀬さん素晴らしかったです。


前回もちょっと書きましたが、退屈したウィーン市民たちがカフェでだらけで皇室ニュースにうんざりしている場面。なぜか毎回初演雪組を思い出します。女性だけで、男性だけが登場する場面の退屈きわまりない雰囲気がよく出ていました。
男性アンサンブルのみなさんの歌のクオリティが毎回高かったです。


プレビュー初日から完成度の高さを感じましたが、プリンシバルとアンサンブルのコーラス、両方の歌と演技のクオリティがより高まってこそ、曲のもつ素晴らしい世界観が表現され舞台全体の完成度がより高まります。


コルフ島の場面。シシィが大好きだったパパ、憧れていたパパと、パパみたいになりたかったのになれなかったシシィとのデュエットがより美しく切なく響いてきました。大好きなパパも去っていって、シシィはより孤独になりました。

シシィがフランツに最後通告を突きつける場面。扉に背を向けて机に戻るシシィとショックを受けながら扉を離れていくフランツ。扉を挟んで背を向けるタイミングがきれいに同じでした。出会った時は幸せ感に満ちていた二人の心がまだ完全には離れていないのに、シシィは「私の命委ねるそれはわたしだけに♪」と自立していく。さみしいけれど人はみんな一人なんですね。最期はみんな一人で旅立っていかなければらならない。


それにしても、ルキーニに手渡された銃をぶっぱなした瞬間に躍動し始めた少女のシシィ。
少しずつ歳を重ねていく花ちゃんの演じ分けはあっぱれというより他なく、どこにも違和感なく晩年までを生き抜く姿は皇后そのもの。毎回涙を流しながら全身でエリザベートを体現していくエネルギーは半端ではなかっただろうと思います。一路さんを観ていた時も思いましたが、すごく努力をしているんだろうけれど、努力しています感なく、余裕で演じているように感じさせるところにプロ意識を感じます。

まだまだ書きたいですが今日はここまでにします。