エリザベート:花總まり
トート:井上芳雄
フランツ:田代万里生
ルドルフ:京本大我
ゾフィー:香寿たつき
ルキーニ:山崎育三郎
少年ルドルフ:池田優斗
昼の部(13時30分-16時40分)。満員御礼。
一カ月ぶりの観劇でした。
カーテンコールでトートが登場する時の曲と、トートダンサーの振付が変わっていました。
トートダンサーの皆さんのダンスがビジュアル的により美しくなっていて、舞台全体に、やがて終わりを迎えようとする大帝国時代の末期の宮廷の人々が、そうとは知らずに大きく時代が動いていこうとしている流れに抗いながら生きた雰囲気がより出ていたのかなと感じました。
少女時代のシシィがパパに甘える姿がより10代の少女らしく可愛くなっていて、最後にトートの胸に飛び込んでいく時のシシィは、トートに見初められた少女時代に戻ったんだとはっきりわかりました。
腕をパパの肩に乗せたりして花ちゃんシシィに甘えられる大谷さんパパ、幸せですね。
溌溂していて、ぴょんぴょんと飛び跳ねていて、ヘレネのお見合いに付き添ってたお茶会でマカロンを頂戴といっている仕草も、フランツの放った銃の音に反応して見つめ合う場面も、フランツが好きにならずにはいられないのを客席は納得。
初めて出会った時の、若き皇帝フランツと生命力にあふれた屈託ない笑顔をみせるシシィが手を取り合って歌う場面。晩年のすれ違いをうたう「夜のボート」の場面が、同じメロディラインなので重なってしまい、切なくて涙が流れていました。
花ちゃんシシィの「幸せになりましょう」がより可愛らしく、純粋に10代の女性が心からフランツと幸せに暮らしていきたいという想いにあふれていました。
フランツの眼差しにも優しさがあふれていましたが、「皇帝に自由などない、皇后にも等しくその重荷がかかってくる」ことを言わなければなりませんでした。
「夜のボート」の場面では、出会ったばかりの若き日の二人を思い出して、また切なくなり涙が流れていました。
今までのフランツはこんなにシシィへの愛を表に出して主張していたのかなと思うぐらい、田代さんフランツのシシィへの愛は痛いぐらいのところがあって、なおいっそう切なくなります。ハンガリー訪問で、革命家の放った銃からシシィを守ろうとする細かいしぐさにもシシィへの想いがあふれています。
悪夢の場面で、シシィへの愛をめぐって、井上さんトートとではなく、山崎さんルキーニと田代さんフランツがはりあうぐらいの雰囲気がかもし出されていておどろきました。
ルキーニがトートからナイフを受け取る場面をみせられたフランツは、登場人物たちが総出演している中で、シシィだけがいないことに気づくと、「何をしているんだ」「やめろー!」と叫んでいました。目には涙をあふれさせながら、髪を振り乱し、突き飛ばされても、突き飛ばされてもルキーニに必死にしがみついていき止めようとするところをトートダンサーの一人に阻まれていました。今までの舞台でも、フランツかわいそう、と毎回感じていたと思いますが、こんな場面ははじめてかもしれません。天上で二人は今幸せに暮らしているかな。そう願わずにはいられないぐらいフランツの叫びは悲痛でした。田代さんの声はよくとおって聴きやすいです。さすがです。ルキーニがフランツへの怒りを露わにしている雰囲気もはじめてかなと思います。
山崎さんルキーニ、よりいっそう同化していて手つきや歌い方にいやらしさが増していました。まだ途上かなという感じもありますが、高嶋さんがつくり上げたルキーニとは違う、新しいルキーニ像をつくっていると思います。
井上さんトート、お化粧が少し濃くなったでしょうか。
より丁寧にのびやかに、長い手足を存分に生かしつつ歌われていました。
今までのトートより、軽やかに踊っているし、シシィとの雰囲気も至近距離になっている感で、より追いかけつつ、よりひんやり感を出しつつ、より寄り添いつつな雰囲気です。
最後に胸に飛び込んできたシシィを抱きとめ、腕の中で倒れ込んで動かなくなったシシィを棺の上にのせたあとの立ち姿に、シシィに陰で寄り添い続け、自分を守りながら必死に生きてきた女性の美しさを引きたててみせながら讃えている、黄泉の国の帝王ですが人間らしい愛をかもし出していると感じました。
白い衣装の花ちゃんシシィと井上さんトートのツーショットは、宝塚っぽい美しさです。
井上さんトートのまなざしには一路さんトートに通じる雰囲気を、手つきにはずんこさんトートに通じる雰囲気を感じてしまうのはわたしだけでしょうか。一路さんとずんこさんをたして二で割ったような、宝塚っぽい様式美を感じさせてくれます。
一幕最後の鏡の間では、花ちゃんシシィ、井上さんトート、田代さんフランツが、それぞれに強い自己主張を、たしかな歌唱力でしているので、三人の拮抗している感がすごくかもし出されていて、見ごたえ聴きごたえ十分でした。
ビジュアル的にも美しさをはりあわんばかりぐらいの雰囲気だったと思います。
二幕の「私が踊る時」のシシィとトートの拮抗も、お互いにすごいエネルギーをかもし出していたと思います。きっと二人がつくりだす雰囲気の相乗効果ですね。呼吸がすっかりわかっているような、でも慣れ合いにならずに、よりそれぞれ相手を立てつつ自分を主張しています。エネルギーにあふれている場面でした。
皇后の体操室で倒れたシシィに、ドクトルゼーブルガーを装って近づいてきたトートに、「まだあなたとは踊らない」と左腕を伸ばし、出ていってというふうに人差し指を向ける場面。横顔も仕草も美しく凛としていて、本物の皇后がそこにいるような感じでした。
一幕の最大の聴かせどころの「私だけに」。より力強く自分を信じて生きていくんだと心を決めた10代の女性がうたう「私だけに」になっていました。自由に羽を広げて大きく羽ばたいていきたいという生命力にあふれていました。
京本さんルドルフ、二十歳でジャニーズからの大抜擢だそうですが、まだ演技がぎこちなくて一生懸命な雰囲気と若さが、舞台に登場すると20分ぐらいで散っていってしまうルドフルの危うさを秘めた、はかなげな雰囲気とよく合っていたと思います。ダンスもきれいでした。
ルドフルは革命に加担して逮捕され父フランツと対立し、久しぶりに会った母に助けを求めますが、母であるシシィの表情はすでに人生に疲れ切ってしまっていました。なぜ見捨ててしまったのかと一瞬思いましたが、自分を守るためにエネルギーを消耗していてルドルフが窮地に立たされて孤独の淵にいることに気づくことはできなかったんですね。少年時代のルドルフの登場場面も、棺の舞台装置の上でシンプルになった分、すでにピストルを手渡されているのが、よりリアルに後の運命を大きく暗示しています。こわいですね。池田くんの子ルドは、小柄なエンジェルボイス。かわいかったです。
香寿さんゾフィ。より厳しく威厳が増し、同時に大帝国の行く末と息子を思う故に全て動いているという雰囲気がかもし出されていました。ゾフィの言っていることは大帝国を守っていかなければならない責任を思えば間違っていないとより思えるゾフィでした。ゾフィを演じるには実年齢でまだ少し若いかもしれませんが、たしかな歌唱力と演技力で間違いなくみせてくれるタータンさん。雪組時代から適役を演じていても好きでしたが、やはり好きですね。
「あかねさす紫の花」の中巨鎌足役など思わず思い出しています。
(今の花ちゃんで、額田大王なんてもう一度みたいですが、あり得ないかな。)
未来さんのルドヴィカ母さんと娼婦館のマダムとの演じ分けもより確かでパワフルで
無理がなくて素晴らしいです。
続けて観劇しようとしているので駆け足で綴ってみました。
久しぶりにまた心のエネルギーを補給します。
客席にタカラジェンヌらしき女性たちをお見かけしました。
髪の色と雰囲気がちがうのですぐにわかります。
緊張の役割をひとつ終えてほっとしているところで、睡眠不足になっているので
リズムを取り戻していかないとです。
外は熱風の一日でした。都心は夕方になっても、アスファルトやコンクリートの上の熱風がすごかったです。本格的な夏になりました。





トート:井上芳雄
フランツ:田代万里生
ルドルフ:京本大我
ゾフィー:香寿たつき
ルキーニ:山崎育三郎
少年ルドルフ:池田優斗
昼の部(13時30分-16時40分)。満員御礼。
一カ月ぶりの観劇でした。
カーテンコールでトートが登場する時の曲と、トートダンサーの振付が変わっていました。
トートダンサーの皆さんのダンスがビジュアル的により美しくなっていて、舞台全体に、やがて終わりを迎えようとする大帝国時代の末期の宮廷の人々が、そうとは知らずに大きく時代が動いていこうとしている流れに抗いながら生きた雰囲気がより出ていたのかなと感じました。
少女時代のシシィがパパに甘える姿がより10代の少女らしく可愛くなっていて、最後にトートの胸に飛び込んでいく時のシシィは、トートに見初められた少女時代に戻ったんだとはっきりわかりました。
腕をパパの肩に乗せたりして花ちゃんシシィに甘えられる大谷さんパパ、幸せですね。
溌溂していて、ぴょんぴょんと飛び跳ねていて、ヘレネのお見合いに付き添ってたお茶会でマカロンを頂戴といっている仕草も、フランツの放った銃の音に反応して見つめ合う場面も、フランツが好きにならずにはいられないのを客席は納得。
初めて出会った時の、若き皇帝フランツと生命力にあふれた屈託ない笑顔をみせるシシィが手を取り合って歌う場面。晩年のすれ違いをうたう「夜のボート」の場面が、同じメロディラインなので重なってしまい、切なくて涙が流れていました。
花ちゃんシシィの「幸せになりましょう」がより可愛らしく、純粋に10代の女性が心からフランツと幸せに暮らしていきたいという想いにあふれていました。
フランツの眼差しにも優しさがあふれていましたが、「皇帝に自由などない、皇后にも等しくその重荷がかかってくる」ことを言わなければなりませんでした。
「夜のボート」の場面では、出会ったばかりの若き日の二人を思い出して、また切なくなり涙が流れていました。
今までのフランツはこんなにシシィへの愛を表に出して主張していたのかなと思うぐらい、田代さんフランツのシシィへの愛は痛いぐらいのところがあって、なおいっそう切なくなります。ハンガリー訪問で、革命家の放った銃からシシィを守ろうとする細かいしぐさにもシシィへの想いがあふれています。
悪夢の場面で、シシィへの愛をめぐって、井上さんトートとではなく、山崎さんルキーニと田代さんフランツがはりあうぐらいの雰囲気がかもし出されていておどろきました。
ルキーニがトートからナイフを受け取る場面をみせられたフランツは、登場人物たちが総出演している中で、シシィだけがいないことに気づくと、「何をしているんだ」「やめろー!」と叫んでいました。目には涙をあふれさせながら、髪を振り乱し、突き飛ばされても、突き飛ばされてもルキーニに必死にしがみついていき止めようとするところをトートダンサーの一人に阻まれていました。今までの舞台でも、フランツかわいそう、と毎回感じていたと思いますが、こんな場面ははじめてかもしれません。天上で二人は今幸せに暮らしているかな。そう願わずにはいられないぐらいフランツの叫びは悲痛でした。田代さんの声はよくとおって聴きやすいです。さすがです。ルキーニがフランツへの怒りを露わにしている雰囲気もはじめてかなと思います。
山崎さんルキーニ、よりいっそう同化していて手つきや歌い方にいやらしさが増していました。まだ途上かなという感じもありますが、高嶋さんがつくり上げたルキーニとは違う、新しいルキーニ像をつくっていると思います。
井上さんトート、お化粧が少し濃くなったでしょうか。
より丁寧にのびやかに、長い手足を存分に生かしつつ歌われていました。
今までのトートより、軽やかに踊っているし、シシィとの雰囲気も至近距離になっている感で、より追いかけつつ、よりひんやり感を出しつつ、より寄り添いつつな雰囲気です。
最後に胸に飛び込んできたシシィを抱きとめ、腕の中で倒れ込んで動かなくなったシシィを棺の上にのせたあとの立ち姿に、シシィに陰で寄り添い続け、自分を守りながら必死に生きてきた女性の美しさを引きたててみせながら讃えている、黄泉の国の帝王ですが人間らしい愛をかもし出していると感じました。
白い衣装の花ちゃんシシィと井上さんトートのツーショットは、宝塚っぽい美しさです。
井上さんトートのまなざしには一路さんトートに通じる雰囲気を、手つきにはずんこさんトートに通じる雰囲気を感じてしまうのはわたしだけでしょうか。一路さんとずんこさんをたして二で割ったような、宝塚っぽい様式美を感じさせてくれます。
一幕最後の鏡の間では、花ちゃんシシィ、井上さんトート、田代さんフランツが、それぞれに強い自己主張を、たしかな歌唱力でしているので、三人の拮抗している感がすごくかもし出されていて、見ごたえ聴きごたえ十分でした。
ビジュアル的にも美しさをはりあわんばかりぐらいの雰囲気だったと思います。
二幕の「私が踊る時」のシシィとトートの拮抗も、お互いにすごいエネルギーをかもし出していたと思います。きっと二人がつくりだす雰囲気の相乗効果ですね。呼吸がすっかりわかっているような、でも慣れ合いにならずに、よりそれぞれ相手を立てつつ自分を主張しています。エネルギーにあふれている場面でした。
皇后の体操室で倒れたシシィに、ドクトルゼーブルガーを装って近づいてきたトートに、「まだあなたとは踊らない」と左腕を伸ばし、出ていってというふうに人差し指を向ける場面。横顔も仕草も美しく凛としていて、本物の皇后がそこにいるような感じでした。
一幕の最大の聴かせどころの「私だけに」。より力強く自分を信じて生きていくんだと心を決めた10代の女性がうたう「私だけに」になっていました。自由に羽を広げて大きく羽ばたいていきたいという生命力にあふれていました。
京本さんルドルフ、二十歳でジャニーズからの大抜擢だそうですが、まだ演技がぎこちなくて一生懸命な雰囲気と若さが、舞台に登場すると20分ぐらいで散っていってしまうルドフルの危うさを秘めた、はかなげな雰囲気とよく合っていたと思います。ダンスもきれいでした。
ルドフルは革命に加担して逮捕され父フランツと対立し、久しぶりに会った母に助けを求めますが、母であるシシィの表情はすでに人生に疲れ切ってしまっていました。なぜ見捨ててしまったのかと一瞬思いましたが、自分を守るためにエネルギーを消耗していてルドルフが窮地に立たされて孤独の淵にいることに気づくことはできなかったんですね。少年時代のルドルフの登場場面も、棺の舞台装置の上でシンプルになった分、すでにピストルを手渡されているのが、よりリアルに後の運命を大きく暗示しています。こわいですね。池田くんの子ルドは、小柄なエンジェルボイス。かわいかったです。
香寿さんゾフィ。より厳しく威厳が増し、同時に大帝国の行く末と息子を思う故に全て動いているという雰囲気がかもし出されていました。ゾフィの言っていることは大帝国を守っていかなければならない責任を思えば間違っていないとより思えるゾフィでした。ゾフィを演じるには実年齢でまだ少し若いかもしれませんが、たしかな歌唱力と演技力で間違いなくみせてくれるタータンさん。雪組時代から適役を演じていても好きでしたが、やはり好きですね。
「あかねさす紫の花」の中巨鎌足役など思わず思い出しています。
(今の花ちゃんで、額田大王なんてもう一度みたいですが、あり得ないかな。)
未来さんのルドヴィカ母さんと娼婦館のマダムとの演じ分けもより確かでパワフルで
無理がなくて素晴らしいです。
続けて観劇しようとしているので駆け足で綴ってみました。
久しぶりにまた心のエネルギーを補給します。
客席にタカラジェンヌらしき女性たちをお見かけしました。
髪の色と雰囲気がちがうのですぐにわかります。
緊張の役割をひとつ終えてほっとしているところで、睡眠不足になっているので
リズムを取り戻していかないとです。
外は熱風の一日でした。都心は夕方になっても、アスファルトやコンクリートの上の熱風がすごかったです。本格的な夏になりました。




