カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

竜飼いその80・自業自得に捕まって

2020-10-06 22:00:23 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は雪色の鋼鉄トカゲモドキという品種名です。気性は少し意地悪で、用途は移動用です。

 俺の移動竜はトカゲモドキと呼ぶと機嫌を損ねる。トカゲモドキをトカゲモドキと呼んで何が悪いと畳みかけるとグレて動かなくなる。いくら自分の竜でも嫌がることを続けたらそのうち酷い目に遭わされるわよと妻に言われても止めないでいたら確かに酷い目に遭わされたが、絵に描いたような自業自得だと誰も同情してくれない。
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竜飼いその79・地竜は大地に飛竜は空に

2020-10-03 19:26:13 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は蒼空の鉱石デミドラゴンという品種名です。気性は臆病で、用途は仕事の相棒です。

 叔父が処分しようとした仔竜を引き取ると言い張った俺に、お前には愛玩されるだけの立場が竜にとってどれ程に惨めか分かるまいと溜息をついた。だから俺は臆病で体の小さい仔竜の明晰な頭脳と鋭い嗅覚を活かす訓練を行い何とか一人前にしたが、それでも臆病で根性無しの気性までは変えられなかった。
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竜飼いその78・若葉を見送りながら

2020-09-26 20:49:58 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は若緑の疾風トカゲモドキという品種名です。気性はお馬鹿で、用途は子守りです。

 うちの子守り竜は子供が言う事を聞かないと転がって動かなくなる。単に事態に対応出来なくなってフリーズ状態に陥るのだが、子供は竜が死んでしまったと大泣きして仲直りする。そんな騒々しくも微笑ましいやり取りは子供が成長して孫が生まれた後も、竜が寿命で本当に動かなくなってしまうまで続いた。
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竜飼いその77・飛べない竜と消えた兄

2020-09-25 21:07:26 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜はどどめ色の幽玄オールドドラゴンという品種名です。気性は従順で、用途は移動用です。

 うちの飛竜は体色が天然迷彩の上に羽音がほとんどしないせいか極めて気配を消すのが巧い。ただ、気性的に戦闘向きではないので猟に出る時は常に騎乗した兄が獲物を仕留める役目を果たしていた。だからあの日、何故兄だけが戻って来なかったのかは恐らく二度と飛べなくなった飛竜だけが知っている。
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竜飼いその76・土色遊戯

2020-09-23 23:37:00 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は焦茶色の虚空トカゲモドキという品種名です。気性は乱暴もので、用途はペットです。

 うちの竜は近所にある緑地公園を散歩中、よく地べたに転がってじたばたと暴れる。傍から見ると聞き分けの無い駄々っ子のようだが、何かあっては大変だと医者に見て貰ったところ異常はなく、恐らく単に土の感触が好きなのだろうと言われたので、散歩の後はそういうものだと潔く洗うことにしたら、何故か余計派手に転がるようになった。
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骨董品に関する物語・ヴィクトリア朝の涙壺・その2

2020-09-18 21:20:06 | 幻想世界の竜飼い

 奔放の限りを尽くした夫の元で病み衰えた彼女は、ある日とうとう臨終の時を迎えることになった。そうなって初めて夫は妻に対する嘗ての熱愛を思い出して赦しを請うたが、彼女は微笑みながら貴方を決して赦しませんと涙の詰まった壺を渡した。それが愛なのか呪いなのかは娘の私にも分からない。
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竜飼いその75・甘美なる琥珀の竜

2020-09-17 21:03:17 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は紫暗の鉱石トカゲモドキという品種名です。気性は穏やかで、用途は食用です。

 友人は琥珀糖という半透明な鉱石を思わせる砂糖菓子を作るのが得意だが、何故か完成してしばらくは竜が鳴いているような音を立てる。理由については昔同じ名前の竜がうちにいたからだと思うと友人は言い、分かったような良く分からないような気分になるが、琥珀糖は美味なので気にしないことにした。
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竜飼いその74・竜の恩返し(バレバレ)

2020-09-16 22:32:51 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は真紅色の疾風ドラゴンという品種名です。気性は温和で、用途は家事手伝いです。

 街外れで紐に絡まっていた赤い色の飛竜を助けたら、数日後に赤毛の娘がうちに一晩泊めて欲しいと尋ねて来てそのまま居座った。家事を手伝ってくれるから居てくれるのは別に構わないのだが、たまに尻尾や角が露出しているのを指摘したら、やはり正体を知られた以上此処にはもう居られませんと帰ってしまうのだろうか。
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竜飼いその73・岩石親父と碧空色の陰謀

2020-09-12 07:17:01 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は碧空の鉱石デミドラゴンという品種名です。気性は利発で、用途は愛玩用です。

 定年退職した旦那が鬱陶しいという極めて冷酷な理由から、母が父の反対を押し切って飼い始めた竜は甘え上手のお利口な子だったので家族全員に可愛がられたが、特に悩殺と呼ぶに相応しい溺愛振りを示す父の姿を眺めながら一人密かにほくそ笑んでいた母の姿を目撃したことは、とりあえず私一人の秘密にしておこうと思う。 
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竜飼いその72・白銀哀歌

2020-09-09 23:06:24 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は白銀の薫風トカゲモドキという品種名です。気性は利発で、用途は飛翔用です。

 祖父が動物園に勤めていた若い頃、立派な檻に翼を封じられて見世物にされた飛竜たちは、それでも飼育員に大事にされて平穏に暮らしていた。しかし戦争が始まると共に国を覆った狂気は、飛竜がこの時代に生きることを許さなかった。戦時下における様々な危険を理由とされて、糧食を絶たれながらも最期まで人間を信じて死んでいったであろう飛竜たちに詫びる術はどこにも無いと、祖父は悲しげに呟く。
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