カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

旅路その91・連休二日目

2019-10-21 18:15:33 | 旅人の記録
たかあきは台風一過の観光地に辿り着きました。名所は花畑、名物は果物だそうです。

 凄まじい荒天の合間を文字通りにすり抜けてやって来た観光地は愕然とするほどに人影が少なかった。まあ崖は崩れるわ川は氾濫するわで道が寸断された以上、そもそも遠方からは辿り着く事さえ困難だから仕方ない。だから私は普段以上に生鮮食品や果実、それに並んでいた花を山ほど買い込んで家に帰った。
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旅路その90・魚や果実に食べられるコース

2019-10-20 11:00:49 | 旅人の記録
たかあきは雪国の地方都市に辿り着きました。名所は古い水族館、名物は果物だそうです。

 隔絶された共同体というのは怖いもので、傍目からは寂れた観光地でしかないこの土地では余所者が触れてはいけない幾つもの禁忌が存在する。ちなみに触れてしまった余所者は土地の人間によって密かに水族館や果樹園に連行され、冬の雪解けが過ぎても行方不明のままだったりするから余計に怖い。
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旅路その89・占星の現実

2019-10-19 19:58:31 | 旅人の記録
たかあきは雨月の地方都市に辿り着きました。名所はツインタワー、名物は魚料理だそうです。

 街の何処からでも見えるツインタワーのレストランで魚料理を頂きながら友人が言うには、アフロディーテと息子エロスが怪物に襲われ魚に変身して逃げる際、離れ離れにならないようお互いの尾にリボンを結んだのだそうだ。だから魚座は夢想と現実を併せ持つのだと言い張る友人は地味で頑固な山羊座だ。
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旅路その88・いにしえの戦場

2019-10-14 17:06:32 | 旅人の記録
たかあきは春の学生街に辿り着きました。名所は城址公園、名物は海鮮鍋だそうです。

 今はどうという事のない地方都市でしかない城下町は、ずっと昔に海の向こうの国から戦争を仕掛けられた時、まさに水際で船団の上陸を許さず国を守り切った際の戦場なのだそうだ。もっとも街で暮らす学生たちは過去の戦など知らぬまま、平和な海を見下ろしつつ季節ごとの海鮮鍋を賑やかに楽しんでいる。
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旅路その87・地上の月

2019-10-09 20:25:26 | 旅人の記録
たかあきは雨月の観光地に辿り着きました。名所は特に無し、名物は饅頭だそうです。

 古の有名歌人が歌に詠んだという名月を観賞しようとやって来た日、その街は重く垂れこめた灰色の雲から降り注ぐ雨に冷たく濡れそぼっていた。当てが外れた憤りから見えない月に向かって吠えまくる友人を放置して元々の目的だった店に到着した俺は、その店でしか買えない月餅を思い切り買い込んだ。
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旅路その86・魔女の秘薬

2019-10-08 21:42:03 | 旅人の記録
たかあきは南国の地方都市に辿り着きました。名所は古城、名物は飴菓子だそうです。

 秋の終わりに訪れた街はちょうど祭りの最中で、道行く人は吸血鬼だったりミイラ男だったりする上に遠慮なしにお菓子を要求してくる。どうせお祭りだしと手製の飴玉を渡してから歩み去った背後が何故か阿鼻叫喚の巷と化している様子だが、ひょっとしてハーブ(断じて合法)の配合を間違えたのだろうか。
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旅路その85・海辺の町

2019-10-07 20:13:41 | 旅人の記録
たかあきは春の辺境に辿り着きました。名所は石碑、名物は貝料理だそうです。

 彼女と一緒に訪れた田舎町は砂浜が綺麗な漁師町で、秋の季節になると漁が解禁されるという貝料理が名物となっている。季節外れで残念だったねと僕が言うと街外れにあった何かの石碑から視線を外した彼女は自分も生まれは海辺の人間だから貝料理は好きじゃないのと答えてきたが、食べ飽きたという意味だろうか。
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旅路その84・バタークッキーの思い出

2019-10-06 18:58:29 | 旅人の記録
たかあきは晩夏の宗教都市に辿り着きました。名所は特に無し、名物は焼き菓子だそうです。

 僕の姉は結婚して半年で夫を亡くし、それから一年経たずに尼僧になった。たまに周囲に何もない教会で静かに暮らす姉の元に僕が会いに行くと、いつも穏やかな笑顔でバザー用に焼いたというバター味のクッキーを持たせてくれて、だから、まさか姉が修道士と駆け落ちするなどとは想像もしていなかった。
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旅路その82・歴史は夜に創られる(多分)

2019-10-05 09:06:34 | 旅人の記録
たかあきは収穫月の工業都市に辿り着きました。名所は駅、名物は貝料理だそうです。

 嘗ては豊富な鉱脈を有した金山によって隆盛を誇った歴史ある街の駅前に設置された戦国武将の銅像は当時の金山採掘の為に開発され超技術の粋を凝らして作られた有人型ロボットだと言う噂があるが、山間部でありながら貝そっくりの果実を秘密裏に栽培して加工した名産品を工場生産している街ならやりかねないと思ってしまう。
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旅路その83・断食道場

2019-10-03 23:17:53 | 旅人の記録
たかあきは芽月の辺境に辿り着きました。名所は神殿、名物は野菜料理だそうです。

 世間が平和だとよく分からない事が流行るもので、最近は辺境の神殿に泊まり込んでの断食修行が人気らしい。断食と言っても全く食べない訳ではなく、ある程度内臓の中身を空にしてから代謝を促す野菜料理を摂らせて体内を清掃するという触れ込みで、やはりというか参加者は美を求める女性が多いそうだ。
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