カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

本性

2017-01-06 00:54:20 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『地下鉄』を舞台に、『真紅』と『鞄』と『城壁』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 傷のある素顔を晒された後も男の笑顔は変わらなかった。変わらない笑顔のままで私を血が出るまで殴り、そのまま私は容赦のない力で地下室まで引きずって行かれて鎖に繋がれる。良い子に出来ないなら暫くそこで反省するんだと言い残して男が出ていった後、私はようやくあの男が昔から私に躾と称して何度も酷い事を繰り返していたのを思い出していた。

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素顔

2017-01-05 18:19:07 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『汽水域』を舞台に、『レインコート』と『謎解き』と『強風』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 どうして今まで忘れていたのか、どうして今まで思い出す事が出来なかったのか。その答えも私は既に手に入れていた。そのまま足元も荒く邸内を駆け回って見つけたあの男は自室でお茶を飲んでいたが、君もどうだいと笑顔で誘う男に無言のまま駆け寄った私は男の顔に手を掛け、被っていた精巧なマスクをはぎ取った。現れたのは先生とは似ても似つかぬ端正な、でも頬に酷い傷が刻まれた素顔。
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追撃

2017-01-04 01:00:22 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『青空』を舞台に、『渡り鳥』と『オルガン』と『荒波』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 万策尽きた俺が悪魔に魂を売り渡す覚悟で博士の元を尋ねると、何故もっと早く来なかったと怒られた。こちらはこんな事もあろうかと色々開発を進めておったのだぞと言われ、だから来たくなかったんですよという言葉を何とか飲み込む。結局幾つかの目眩を起こしそうな開発品、それに色々と機能を増やした御嶽丸と共に、俺は決戦の地に向かう事になった。
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想記

2017-01-03 15:43:06 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『図書室』を舞台に、『傷』と『涙』と『ゆで卵』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 捜査に行き詰まったら根本から洗い直せ。そんな先生の教えに従って私は書斎に戻ることにした。書斎の机にはいつの間にか赤い花が飾られていて、奇麗だと思って顔を近づけて香りを嗅いだ直後、私の中で何かが炸裂する。
 勝手に折り取ってしまった赤い花を差し出しながら泣いて謝る私を笑顔のまま折檻し続けた男は、どんなに逃げても転んでも緩やかな足取りで追ってきて、私は池に落とされた。
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代償

2017-01-02 01:16:09 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『映画館』を舞台に、『失敗』と『ノコギリ』と『キャベツ』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 劇場で手品師が行う人体切断であればノコギリが食い込んだ美女が血しぶきと悲鳴を上げようが、最後には笑顔で立ち上がると相場が決まっている。だが、奴は手品師ではなく冷酷な犯罪者だ。一刻も早くアイツを助け出さなければいけない。それは例え俺自身が奴を手に掛けて犯罪者と成り果てたとしてもだ。奴の異常性を知りながらそこから目をそらし続けた結果として、俺だけでなくアイツまで家族を失ったのだとしたら、それが俺に出来る唯一の償いである筈だった。
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断髪

2016-12-30 08:26:45 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『本の中』を舞台に、『髪の毛』と『自由』と『麺類』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。


 昔のアルバムに残された写真では、セピア色の中で子供の頃のアイツが何の屈託もなく笑っている。物心ついてからずっと髪を伸ばしていたアイツは、いつだって飾りを付けた髪を奇麗に編んだり結ったりしていた。だから俺はあの日、まさかアイツが俺の言葉通りに髪を切るとは想像しておらず、その決心に呆然とするしかなかった。
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純白

2016-12-29 21:04:26 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『吹雪』を舞台に、『座布団』と『自由』と『司書』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 奴が家から出ていった日は結構な新雪が周囲に降り積もっていて、だから奴の背中を見送る俺はその白さに一瞬だが奴の行いを忘れ、俺達とは関わり合いのない場所で自分の座る場所を見つけて勝手に幸せになってくれれば良いと思った。それくらいの権利は奴にもあるのだと、あの時は本気で思った。そして今、そんなことを一瞬でも考えてしまったことに関して後悔しかない。
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跡地

2016-12-28 21:43:18 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『地下鉄』を舞台に、『パズル』と『苦悩』と『奪取』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 前回アイツが連れて行かれた帝都郊外の館は、想像通りもぬけの殻だった。焦る気持ちを抑えて廃墟と化した敷地内を探索してみると、地下室に通じる崩れ損ねた通路を発見したので周囲を探ってみると、どうもそこは何かを栽培していた跡地らしい。奴は昔から毒草に詳しく、ソレを使うことにも長けていた。そしてあの日、アイツを除く俺の家族を皆殺しにした。
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緋色

2016-12-27 23:49:54 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『水中』を舞台に、『椅子』と『ワイン』と『芳香』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 奴の処に行きますのでクロを連れて迎えに来て下さい。俺はそんなメッセージを握り潰してあの馬鹿が!と呻いた。かつて自分がどんな目に遭わされたのかを忘れているらしいのは幸いだが同時にそれ故の暴挙だろう。かつて奴によってびしょ濡れのまま血を流して気を失っていたアイツの身体の冷たさを思い出し身震いする俺。
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孤島

2016-12-26 21:43:45 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『お城』を舞台に、『渡り鳥』と『カメラ』と『凍結』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 クロにそっくりな蒸気犬、黒雪丸と一緒なら自由に歩いて良いと言われたので遠慮なしに探検を敢行することにしたが、男が暮らしている西洋の城を思わせる豪奢な造りの舘は海上に浮かぶ小島に建てられていて、周囲には他の島影一つ見えない。建物は森に囲まれているが、下手に森の奥に行こうとすると黒雪丸が唸って行く手を阻んでくるのだった。
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