人間が一生の間に感じられる幸福の数は、せいぜいこのケースに入るマッチの本数程度だと彼は言った。たとえこの世界に無数の幸せが存在していようと、それらの全てを感じられるだけの容量など人間には存在しないと。それなら無数の幸せを追わず一つだけの幸せを感じながら生きればいいのではないかと尋ねる僕に、彼はただ嗤うだけだった。
人間が一生の間に感じられる幸福の数は、せいぜいこのケースに入るマッチの本数程度だと彼は言った。たとえこの世界に無数の幸せが存在していようと、それらの全てを感じられるだけの容量など人間には存在しないと。それなら無数の幸せを追わず一つだけの幸せを感じながら生きればいいのではないかと尋ねる僕に、彼はただ嗤うだけだった。
曽祖父の遺品である精巧な携帯式の日時計は、どういう訳か地上のどの場所でも正確な時間を差す事がなかった。故に大概の人間は其れを只の装飾品と認識したが、その日時計を形見分けで貰った末の曾孫だけは辛抱f強く使える場所を探し続け、やがて探し当てた。但し見付けたのは彼の玄孫の代になってから、別の惑星でだった。