長い間独身を貫いていた叔父の持つ宝石箱には、虹色に輝く硝子製の花をモチーフにした数点のアクセサリーが入っていた。元々は指輪もあったが、今は冷たい土の下に埋まっている棺の中で眠る婚約者の指に輝いている。もし永遠の愛という呪いに殉じるのなら此れをお前にやろうと伯父は疲れた笑顔で囁く。
長い間独身を貫いていた叔父の持つ宝石箱には、虹色に輝く硝子製の花をモチーフにした数点のアクセサリーが入っていた。元々は指輪もあったが、今は冷たい土の下に埋まっている棺の中で眠る婚約者の指に輝いている。もし永遠の愛という呪いに殉じるのなら此れをお前にやろうと伯父は疲れた笑顔で囁く。
人間の抱く可能性というのは植物の種のようなもので、菫の種は決して薔薇の花を咲かせない。だが、ただ一粒の芥子の種が異郷で芽生えて根を張り、花を咲かせて種を落とし、再び芽吹きながら広がり、やがてその地を支配するかのように隆盛を極めることもまた、珍しい話ではないのだ。