繊細な模様の入った素敵な菓子器を叔父は失敗作だと嘆く。そしてボンボンを入れて蓋を閉め、暫く経ってから開くとボンボンは二つになっていた。増えたボンボンを叔父と一つずつ食べながら何が失敗なのかと尋ねる私に、伯父は菓子を入れたままだと世界を埋め尽くすまで延々と増え続けるんだと哀し気に呟いた。
繊細な模様の入った素敵な菓子器を叔父は失敗作だと嘆く。そしてボンボンを入れて蓋を閉め、暫く経ってから開くとボンボンは二つになっていた。増えたボンボンを叔父と一つずつ食べながら何が失敗なのかと尋ねる私に、伯父は菓子を入れたままだと世界を埋め尽くすまで延々と増え続けるんだと哀し気に呟いた。
富をもたらす子供を授かりながら、その有難さを忘れて全てを失った昔話の翁のように、俺もまた喪失の時を迎えた。成功に思い上がり父の代から我が家を支えてきた男を周囲の甘言に乗せられ解雇した俺は、やがて芯材を失った襟のように跳ね上がり取り返しのつかない失態を犯したのだ。