最高気温26度。
秋のフルムーン。
月明かりの四万十川は、なんとも幻想的な風景を見せている。
僕は「ムーンリバー」をカヌーで下ってゆく。月光の水面を滑るように。
青白い月の光を浴びながら、大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと長く吐きだす。
聞こえてくるのは、風、瀬の音。鹿、虫、鳥の声。
秋のムーンライトマジック。ここはまるで別世界。
月の王国に一人、フラリと迷い込んでしまったかのよう。
月影の小さな瀬で、ちょいとフネのバランスを崩す、おっとっと・・・。
川原に上陸し、火を起こした。
アルミフォイルに包んだ肉とイモを熾火にくべ、月を肴にワインを飲んだ。
某日。
散歩に行こうと庭に降りると、アサギマダラが一頭、ヒラヒラと舞っていました。
「南へ渡る途中だろうか・・・」
羽の浅黄色も美しいアサギマダラは、渡りをする蝶です。
(1日で200キロ。最長1000キロ以上も移動した記録がある)
でも、その美しかった羽は長い旅に痛み、幼子がいる家のフスマのように破れかけてボロボロです。
「この先の旅路も長いのかな。大風、雨、天敵にさらされ、いったい何頭が生き残ったのか。
ヒラヒラ飛んでいる姿は頼りないのに。野生に生きる命は儚い、でもたくましいものだ。
せめて四万十では、その羽根をゆっくりと休められるといいけど」