アーク・フィールドブック

四万十フィールドガイド・ARK(アーク)のブログ

友がみな我よりえらく見える日は

2025-01-21 | ・最新のお知らせ・イベントなど

「友がみな我よりえらく見える日は」

2011年春に書いた旅雑文です。期間限定公開中。

 最高気温22度。

 皆さんお元気ですか。ひさしぶりに「旅雑文」書いてます。

あたたかな風が北の国にも吹きはじめ、サクラのたよりが東の国に届く頃。

南国四万十は、若葉が初夏の陽差しにきらめいています。

 

 風、水、草木が輝く四万十の春の川べ。

沈下橋にこしかけた僕は、早足で駆け抜けてゆく南国の春を、ぼんやりとながめてました。

しかし、昨今の世情では、「のんびりと春をながめている余裕はないよ・・・」

といった気分の方も多いのではないでしょうか。

 

 「落ち込んだ時や、傷ついたときに、どうやって気分を回復させるか?」

・趣味に没頭する・酒や美食にはしる・スポーツやジョギングに打ち込む・旅に出る 

・好きな人と過ごす・四万十川でカヌーを漕ぎ焚き火を囲む(笑)などなど。

あと、聞いた話では、

「人間の体や脳のためには、人間が作ったものではないものを、毎日10分でいいから見つめると良い」

とのことです。

ひとそれぞれ、いろいろなやり方があると思いますが、

本を読んで過ごすのなら、この一冊も「なかなか良いかも・・」と思ったので紹介します。

 

 

 
 アパートの5階から転落し両目を失明した市役所職員、

 

その容貌ゆえに四十五年間、一度も男性とつきあったことのない、独身OL・・・

人は劣等感にさいなまれ深く傷ついたとき、どのように自尊心をとりもどすのか。

読むとなぜか心が軽くあたたかになる、新しいタイプのノンフィクション。

文庫本の裏表紙より

 

「友人が本物の不幸におちいった時、私は友人になにもしてあげられないことに驚き、とまどった。

私にできることといったら、友人が自力で不幸を克服するのをみていることくらいだった」

「人は自分でつちかってきたやり方によってのみ、困難な時の自分を支えることができる」

友よ、より。

 

 今という時代に生きる市井の人の16のストーリー。

一篇が短く、淡々とした文章が読みやすい。

登場するほとんどの人物は、それぞれの人生でつまずき、痛み、

先の見えない不安を抱え、あまり幸福とはいえないような日常を暮らしている。

読者である僕らは、そのストーリーの風景や様子を、ありありと心に映し感じるコトができる。

なぜなら「生きてゆくほとんどの時間には、映画やドラマのような、

華やかなクライマックスやハッピーエンドはなく、負けるコトが多く、ぱっとしないコトばかりだ」

ということをよく知っているから。

 

 先の見えない状況にあっても、主人公たちの、

「それでも、それなりに、なんとかやってゆくしかないのだ・・・」

と、かすかな希望(光)のようなものをたよりに、

自分を励まし支え、日々を生きる姿が、読者のココロをじんわりとあたためてくれるのです。

 

「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ」 

石川啄木の「一握の砂」所収。



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