’08/05/31の朝刊記事から
自衛隊機派遣断念 情報漏れ「計画」頓挫
中国・四川大地震の被災者支援のため検討していた自衛隊機派遣は30日、正式断念となり、日中間での協力関係構築の困難さが浮き彫りとなった。
政府は歴史問題を背景にした中国国内の情勢を断念理由とするが、一連の経過をたどると、政府内の稚拙な対応も一因となったことは否定できない。
政府 稚拙対応で迷走
中国側から救援物資提供の要請があったのは27日。
要請は中国国防省担当者から、北京の日本大使館駐在の防衛駐在官を通しての「武官ルート」で行われ、同日中に外務省に打電された。
武官ルート
自衛隊と中国人民解放軍は昨年から本格化した防衛交流で、信頼関係が増し、中国側は自衛隊機による輸送を否定しなかった。
ただ災害派遣要請は、外交当局同士で行われることが通例。
防衛省は首相官邸や外務省に「中国政府の正式な要請なのか確認する必要がある」と付言。
外務省は「武官ルートも正式な大使館ルート。きちんとしていた」(幹部)として、翌28日から外交当局同士で支援物資の必要量や輸送手段の調整が本格化した。
官邸が意欲
官邸サイドにも中国側の要請は伝えられ、官邸は自衛隊機派遣実現に意欲を示した。
しかし詳細が固まらないうちに情報漏れ。
同日昼過ぎのテレビニュースで自衛隊派遣の一報が報じられた。
これにより「水面下で準備を進め、中国政府の要請を受けて、日本政府は受託。自衛隊に派遣命令を出す」(政府筋)という両国が思い描いた計画は頓挫。
中国国内のウェブサイトには派遣反対の書き込みが増え、中国側も世論に配慮せざるを得なくなった。
防衛省は28日中には派遣隊員の人選を済ませ「30日までに派遣命令が出る」(幹部)と準備を進めていたが、命令は幻に終わった。
分析不足も
外務省は情報リークは官邸サイドからとみて官邸の情報管理を悔やむが、反日世論を受け中国政府内に受け入れ慎重論が台頭するところまで分析し切れていたかは疑問もある。
訪中していた斎木昭隆アジア大洋州局長は29日、武大偉外務次官と会談し、巻き返しを図ったが、受け入れに前向きの返事は得られずじまい。
その時点で派遣に前のめりだった官邸もあきらめ、善後策では「両国の調整の結果、自衛隊機は使わないことにする」(官邸)ことで落ち着いた。