’08/07/19の朝刊記事から
日中ガス田開発合意1カ月 条約交渉難航も
日中両政府が、東シナ海ガス田の共同開発で合意してから18日で1カ月。
だが日中関係筋によると、中国が先行してきた開発への日本の参画を認めた合意に対し、中国国民の反発は根強い。
中国政府は条約締結交渉に慎重姿勢を示しており、次のステップに入るめどは立っていない。
根強い批判
日中が合意したのは
①中国が先行開発する白樺(中国名・春暁)ガス田に日本企業が出資する
②翌檜(同・龍井)ガス田の南側の日中中間線をまたぐ海域に共同開発区域を設定するーの2点。
翌檜ガス田そのものは、対象から外れている。
日中中間線の中国側にある白樺ガス田については、中国側が主権を主張。
日本側は中国の法律に基づいて利益配分を受けることになり、中国外務省は「『共同開発』ではなく『(日本側の)協力開発』」と強調する。
一方、翌檜ガス田は、どちらの国の法律の下で開発するのか決まっていない。
中国政府は共同開発合意にあたり、白樺の主権が中国側にあるとの主張を譲らなかったことで、外交的に一定の勝利を収めたと評価した。
しかし、日本の参画を認めたことで、一部の国民からは「弱腰」との批判が続いている。
このため中国当局は、白樺周辺の警備に最新型の大型巡視船を配備するなど、主権アピールに躍起となっている。
急いだ合意
中国政府の対日外交ブレーンの一人、清華大学(北京)の劉江永教授は「中国の国民感情などを考慮すれば、中国の主権下にある春暁よりも北に位置する共同開発区域の開発を先行させるのが現実的だ」と指摘する。
日本政府は「優先順位を決めているわけではない」(外務省)との立場だが、中国側が早急な条約締結交渉入りに難色を示しているとされる。
そもそも東シナ海ガス田の共同開発は、7月上旬に開かれた北海道洞爺湖サミットに向けて「日中強調」をアピールするため、合意を急いだ側面がある。
このため「具体的な進展には、相当の時間がかかる」(日中関係筋)といった見方が支配的だ。
(北京・高山昌行、東京政経部・青山修二)
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