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一緒に担い合う

2011-04-17 07:42:45 | メッセージ
宣教 マルコ2・1~12 

大震災が起こって1カ月となりますが。再び大きな余震が発生し、せっかくライフラインが復旧していた地でまた不自由な生活を余儀なくされているということです。不安と恐れは未だに終息していない原発事故の問題と共に、東日本のみならず私たちの日常に及んでいます。そのような中で、今日本中に「ひとりじゃない」と励まし合う声が共鳴し、人として存在している価値観が見つめ直されている時でもあります。

本日は一人の人の命が輝きを取り戻すため、一見非常識ともいえる行動をとった人たちの物語です。冒頭で「数日後、イエスが再びカファルナウムに来られると、家におられることが知れ渡り、大勢の人が集まったので、戸口の辺りまですきまもないほどになった」とあります。これほど大勢の人が集まって来たというのは、イエスさまが福音を伝えると共に、汚れた霊にとりつかれた人をいやし、また多くの病人のいやしを次々になさったからです。イエスさまが初めにもたらされた福音は、神の国の到来の宣言であり、それに伴う解放といやしのみ業でした。その噂を聞きつけた人々がガリラヤ周辺からぞくぞくとイエスさまのもとに押し寄せてきたのです。

「戸口の辺りまですきまもないほどの中で、イエスさまが語っておられると、4人の男が中風の人を運んで来ました。口語訳には「人々がひとりの中風の者を4人の人に運ばせた」とありますから、彼らが友人なのか、病人の使用人なのかは定かではありませんが、とにかく担架か何かに載せて4人の男が運んできたのです。しかし、群衆に阻まれて、イエスのもとに連れて行くことができなかったので、何と彼らはイエスがおられる辺りの屋根をはがして穴をあけ、病人の寝ている床をつり降ろした」とあります。
彼らはその病人を何としてもイエスさまのもとへ連れて行こうと固い決意のようなものをもってそれを遂行しようとするわけですが、その結果実に突拍子もない、まあ無鉄砲ともいえるような手段でもって、それを果たそうとするのであります。

他人の家の屋根によじ登り、屋根をはがして大穴をあけ、横たわった中風の人を床ごとつり降ろしてイエスさまの反応をその大穴から覗き込む4人の男。ボロボロと落ちてくる屋根の土をあびながらあっけにとられている群衆。何とも言えない光景です。
とにかく何が何でもイエスさまのもとに連れていく!行きさえすれば、、、何らかの形で答えてくださる。その強い意志と願いがあったからこそ、彼らは他人の家の屋根をはがすことで当然受けるであろう非難や代償をもいとわず、それを担い合えたのでしょう。

「イエスさまはその人たちの(4人の男)信仰を見て、中風の人に、「子よ、あなたの罪は赦される」(原意;すでに赦されている)とそう言われたと聖書は伝えます。

4人の男のしたことは、現代であれば器物破壊罪ともいえるものです。それ本当に非常識な行動です。ところがイエスさまは、この4人の人たちを見て、それを彼らの「信仰」と仰せになり、彼らが担いで来た中風の人に、「あなたの罪は赦されている」と宣言なさったというんですね。「神は生きておられる。イエス・キリストは救い主だ」と宣言してそのみ言葉に生きてゆく道」。それは世間からすれば愚かにも見えることであり、そんな不確かなものを求め、すがって何になる。そんなものは何千年も前の話だと、愚かに見えるかも知れません。しかしそんな人の常識を超えてお働きになる神の力を愚直なまでに求め、そこに生きようとする者たちを、主は信仰として受け取ってくださり、救いの宣言を与えて下さるのであります。

一方、その4人の信仰に担がれ主イエスの前に吊り降ろされた中風の人の心中はどのようであったでしょう。これまでの自分の人生について「身体に障害を持つ者は罪がある」という当時のユダヤの社会通念によって、自分や家族を責め続け、ずっと悩み、苦しんできたのではないでしょうか。「自分は何らかの罪か因縁によって、神の呪いと罰を受けているのだろうか。自分が悪いのか、それとも父祖の罪のゆえか」。彼が思い浮かべる主の御顔は厳しく怒りに満ちた裁きの姿だったのかも知れません。彼は肉体的苦痛と共に、言い知れぬ精神的苦痛にずっとさいなまれてきたことでしょう。

しかし幸いな事に、彼の周囲におそらく彼のことをいつも気にかけて、日々祈りに覚え、執り成していた人たちがいたのです。その人たちのひとりが4人の男にその中風の人を託し、祈りと共に送り出したに違いないと、私はそのように思えたのです。その祈りを背に受けて、何としてもイエスさまのもとにと行動を起こした。4人の信仰を見て、イエスさまは中風の人に向け「子よ、あなたの罪は赦される(いやすでに赦されている)」と宣言なさいました。この4人の男たち、また送り出した人たちの祈り、執り成しに表されるように、「あなたはすでに赦されているんだよ」「あなたはそのあるがままの状態で神に受け入れられ、赦されているんだよ」と、イエスさまはお示しになられたのではないでしょうか。

さて、この4人の男たちと対照的だったのが律法学者たちでした。イエスさまが中風の人に罪の赦しを宣言すると、そこにいた律法学者たちは動揺し始めました。彼らの心のうちには、イエスのことばが神の聖さを冒す、神を冒涜するものとして響いたのです。彼らはイエスさまのお言葉に対して、旧約の律法をただ杓子定規に当てはめ、「神おひとりの他に、いったいだれが、罪を赦すことができるだろうか」とそう考えたのです。厳格なユダヤ教徒は人が自らを神のように振る舞ったり、又人を神のように崇めたりすることは神に対する冒涜と見なしていました。又罪からの清めの判断を下すのは祭司の務めであることから、「あなたの罪は赦される」と言われたイエスが自らの立場をわきまえていないと考えたのです。本来ユダヤの律法は神がユダヤの民に祝福の道を歩むために与えられた戒めや決まり事であったのですが。いつしか人の手によって本来の意味合いを無くすほど、単なる社会的決まりごと、社会通念となり、皮肉なことに、律法に詳しくなればなるほどそれを守らねば思うほどいつしかそれが、人の心を支配し、縛ったのです。宗教者であった律法学者たちもそういった社会通念に捕われていたのです。

しかし律法学者たちが気づかなかったのは、自分たちの目の前におられる方が神の子メシアであるということでした。律法以前の神のお言葉そのものであられるお方が、ゆるしを宣言なさった。イエスさまは生ける神の子であるので人の罪を赦すことがおできになることを、彼らは知らなかった。いや理解しようとしなかったのです。律法学者たちが持ったその正論が、イエスさまの「罪の赦し」拒むというねじれを引き起こしました。イエスさまは、彼らの理屈や論理、あるいは知識や慣習でもって人を支配し、縛りつけ、切り捨てようとするかたくなさを、霊の目でご覧になっていました。

この所で興味深いのは、イエスさまが、身体のマヒしている中風の病人に対して、身体のいやしだけでなく、「あなたの罪は赦されている」と宣言なさったことです。
誰が見ても病人にとってまず必要なのは、目に見えるかたちでのマヒがとれて歩き回ることができる癒しであるのに、イエスさまは「あなたの罪は赦されている」と宣言なさったのですね。
私たちも、それぞれが抱えている問題の解決、病のいやしがあるならそれは福音には違いないでしょう。けれども、命の根源がみ神にあることを信じる私たちにとって最も大事なことは、主イエスの十字架のあがない、罪の赦しによる神さまとの和解・交わりの回復にあります。
もう一度言いますが、罪の赦し、魂の救。それは目に見えません、表面には現われません。それとは逆に、中風の人が起きて自分の床を持って歩くことは、目で確認することができます。イエスさまは人の痛みや病の苦しみを軽んじたりなさいません。現に中風の人をいやされたのでありますが、それだけで終わっていないのです。つまり、中風の人のいやしをただ奇跡としてだけに終わらせず、彼が全人的に癒されることこそ、神の御心とされた、それが大事なんですね。

この聖書物語は、イエスさまをとり囲むようにして、そこに集まった群衆、中風の人、彼を担いで運んだ4人の人たち、又律法学者たちが登場します。今もし私たちがそこにいるとするなら、私は果たしてどこに立っているだろうかと、想像して見てください。
全人的いやしを求め、信仰の友と必要としている人かもしれません。あるいは家族や知人の救いや問題に対して執り成し、祈る人かも知れません。はたまた主の教えと業に何らかの希望を見出そうと集る群衆の一人かも知れません。学者たちのように自らも気づかぬうちに何らかのこだわりや、又知識に縛られ、自由な心で礼拝できなくなっている者かも知れません。置かれた状況によってその中の誰にもなり得る私たち一人ひとりでもあります。が、その私たち一人ひとりに、イエス・キリストは今必要なメッセージを送ってくださいます。

「一緒に担い合う」というテーマでみ言葉を聞いてきましたが。主と共に生きていく私たちに聞こえてくるのは、「あなたは誰と一緒に、主の救いとその恵みを分かち合うのか」という問いかけであり、それはまた「あなたは誰と一緒に礼拝を捧げようとしているのか」という問いかけでもあります。神の前に失われた者のようであった人が、本来与えられた祝福を取りもどすため、用いられたあの4人のように、私たちも又、執り成し、担い合うものとして世に遣わされてまいりましょう。そこで、主の栄光を拝してまいりましょう。
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