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安井かずみがいた時代/島崎今日子(集英社文庫)

2015年04月18日 | ブックレビュー

 なんとなく書店で見かけて買ってみたのですが、これは凄くよくできてる本だと思いました。元々は雑誌「婦人画報」に2010年から連載されたものですが、一部単行本時の書き下ろしもあるそうです。単行本は2013年2月発売ですが、私は文庫で初めて知りました。文庫はこの3月に出たばかりです。


 安井かずみさんは作詞家としては説明の必要もないでしょうが、その生き方自体が相当話題になっていた人だったんですね。何しろ私の物心がついたときには既に大作詞家でしたから、元々どういう人だったかというのは気にしたことがなかったので。


 この本は彼女に関する証言集なのですが、その証言者はというと、林真理子、平尾昌晃、伊東ゆかり、中尾ミエ、園まり、コシノジュンコ、斉藤亢、村井邦彦、稲葉賀惠、ムッシュかまやつ、新田ジョージ、加瀬邦彦、金子國義、太田進、大宅映子、黒川雅之、加藤タキ、玉村豊男、玉村抄恵子、内田宣政、矢島祥子、吉田拓郎、外弘子、加藤浩文、オースタン順子、渡邊美佐など。(ここだけ敬称略) なにしろ新田ジョージさんというのは安井さんの最初の旦那さんですので、さすがに「話せることと話せないことがありますから」と笑ってたそうですが、こういう人まで引っ張り出したのが偉いですし新田さんもかっこいいです。


 それにしても、この本に出てくる当時の「キャンティ」とかそこに集まってた人たちの暮らしぶりというのは想像を超えてます。海外の話じゃなくて、当時の日本でそういうライフスタイルの人たちがいたというのは凄いです。そんな中から安井かずみさんのような人が出てきたわけで、かなりエネルギッシュな時代であったと。


 証言では安井さんの生い立ちから作詞家デビューに至る経緯、デビュー後の大活躍と最初の結婚、作詞家としての再出発、トノバンとの結婚生活、病が発覚してからのこと、亡くなってからのトノバンのことなど多岐にわたりますが、時系列になっている部分が多いので流れはわかりやすいです。トノバンとの結婚生活はベストカップルのように言われていた部分と、実はお互い無理をしていた部分もあるのでは…とかいう事もあって、証言が進むごとにちょっと辛い感じはしました。まぁ夫婦のことは本人達でないとわからないですし、既にどちらも故人ですので。


 これまでは、ヒット曲のどれが安井かずみさんの曲だとかいうのは気にしたことがなかったのですが、ちょっと意識してみようかと思います。しかし「経験」も書けば「赤い風船」とか「わたしの城下町」もそうだし、「古い日記」もあって「折鶴」もそうだというと、歌詞を聞いて判断するというのは無理ですね、私には。


 で、実は安井かずみさんの歌詞を凄く意識したことが前に一度あって、南沙織さんの「Cynthia Street」というアルバムで作詞をされています。このアルバムは海外録音でA面が日本語詞、B面が英語詞で、A面を全部安井さんが担当してたのですが、それまでの有馬三恵子さんの作品とは明らかに世界が違ったので当時小学生の私としては面食らったものです。いわゆる「少女が大人になった」という感じで。


 そんな意味もあって、安井さんには若干恨みもあったのですが(?)昭和歌謡を象徴する作詞家の一人であることは間違いないです。この人の歌詞があってのヒットという曲も多かったでしょうし。興味のある方は是非読んでみて下さい。力作です。