歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

成瀬巳喜男の『めし』で原節子を観る・・・その10 道端の再会

2013年09月26日 | 原節子
一昨日の続きです。

里子を家に送って行き、いろいろあって、いろいろ考えて、それなりの結論に達しつつある三千代。

家に戻ると、笑顔で来客を伝える妹と、


母親。


来客は誰なのか、もしかして・・・、


もしかして、そうなのです。

※よ~~く見ると、何故か?デザインも紐の通し方も左右で異なるのです。

でも、しかし、突然の来訪に、戸惑い、


表に飛び出し歩きながら思いを巡らす三千代。夫は今回の件をどう思い、何んと云うのか、自分はどう対応したら良いのか・・・。


家に居ると思っていた夫は、銭湯からの帰り道、三千代を見つけて「オィ!」と、呼び止めます。


その声に驚き振り向く三千代、


そこには笑顔の新之輔が、


戸惑う三千代、


一瞬、新之輔の方に歩み寄ろうとするが、直ぐに背を向けて無言で歩き出す。


追いかける新之輔、


「どうしたの」


「いついらしたの」
「うん、今朝」
「真っ直ぐここへ」
「急に出張でね、あちこち行ってたんだ」
「出張」
「うん」
「そう」


「どっか行くつもりだったの」
「いいえ」


「あっ~、喉渇いた」
「ビール召し上がります」
「お金持って来ないよ」
「少しなら、わたし持っているわ」


この辺の描き方が、とても、とても、イイです。物語はクライマックス、どう二人は折り合いをつけるのか、微妙な問題です、それだからこそ、さり気なく、自然に、それとなく、そして、丁寧に、滲むように描いていきます。

二人の表情、二人のやり取り、成瀬監督、なかなかやります、見事な演出です。

ところで、新之輔が、偶々、東京へ会社の出張で来たので、寄って見たとの話しは、明らかに作り話し、三千代もそれなりに嘘と知りつつ・・・そんな風に思わせる描き方です。

この出張ついでの来訪は、誰かの入れ知恵だと思いますし、そう思わせる描き方をしています。

三千代が新之輔への手紙を書き、結局は投函しなかったことを知った母親が、このままでは、これ以上の時間が経過しては、互いに望まない破局が・・・、と思って、行動を起こしたのです。

手紙を投函しなかったシーンの後が、このシーンですから、


母親が大阪の竹内の家に電話で三千代の状況を伝え、両者で和解案を考えたと思います。三千代の立場も、新之輔の立場も、それなりに尊重した“出張途中寄り案”だったのです。

新之輔としても、迎えに行くキッカケが掴めず悩んでいたところですから、その提案をすんなり受け入れた、と思うのです。


この時期、新之輔が竹内家を訪れる理由はそれ以外には有り得ません。すべてを、そして、そんな処まで、こと細かく描いては、説明的で面白く無いのです。

描かない事、余白を作る事、観客に考えさせる事、これぞ名作の条件で、観客へのサービース。

それにしても、“道端”で再会させ、そのあと“大衆酒場”で会話させる演出も、考えたと云うか、それなりに理由があったと云うか・・・。

話しが長くなってしまいました。

この続きは次回。

それでは、また。


コメント
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