前回の続きです。
精神病院に入院していた聡子。面会に訪れた懇意の医師からの、退院手配の申し出を断った聡子。
その夜、神戸は空爆され、病院も被災。
このシーンは聡子の心象風景的な映像になります。
聡子の心のつぶやきがナレーションで流れます。
『これで日本も負ける』
聡子が密航で検挙された年の12月に、日本はアメリカに宣戦布告。その後、精神病院に入院させられ、戦況は大本営発表の日本の勝利を伝えるのみ。
しかし、日本各地で米軍の空爆で大きな被害が出ていることが、病院の患者にまで伝わり始め、そして、神戸にも空爆が始まり、病院も被災し、日本が負けることを確信する聡子。
『戦争も終わる。お見事です』
「アメリカが参戦すれば日本は負ける」と、断言した優作に向けての言葉。
朝焼けの渚、虚ろな表情、苦しそうな息遣い、危うい足取り・・・。
倒れ込み、うずくまり、泣き叫ぶ、聡子。
幼なじみの泰治から、売国奴とされた聡子。
大望の為に、優作の甥、文雄を権力に差し出した聡子。
優作から、大望の為に権力に差し出された聡子。
戦争の時代、狂っていた世界、優作も、文雄も、泰治も、そして、聡子も、時代に翻弄され、狂っていたのです。
すべてを失い、そして、すべてが終わりを告げる。
終戦のテロップ。
ここで、ENDマークと思っていたら・・・。
またしても、こんなテロップ。
死亡が確認されたとは、公的機関から聡子に、夫優作の死亡通知が届いたと云う事?
そして、このテロップ。
偽造の形跡が?とは、公的機関を装って聡子の元に届いたと云う事。
だとすれば、公的機関に問い合わせをすれば、直ぐに、決着する。
そして、また、また、このテロップ。
聡子が、旅立った目的は?聡子の想いは?行動の意味は、いろいろ、想像し、推測し、そして、楽しんで下さいとの、黒沢清監督からのメッセージ?
新たな出発のため、優作と共に暮らした日々、共に大望の為に行動した事実を、切り捨て、否定し、決着し、納得させるため。
『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』(NHK番組HPより)
時代のうねりに翻弄されたと、思い知るのは、翻弄されている真っ只中ではなく、その時代が終わりを告げたとき。
戦争の時代でなくても、時の権力者によって、人々は翻弄されます。
ましてや、いま、百年に一度の感染症という病の流行によって、各国の感染対策によって、世界中の人々が、翻弄されています。
政治は、政策は、人の生死に関わる身近なものです。無関心でいると、命を奪われます。
話が、少しそれました。
兎に角、「スパイの妻」、それなりに、引き込まれ、面白く見させて貰いました。
蒼井優は本当に良い役者です。
これで、15回続いた「スパイの妻」を終わります。
それでは、また。